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2018年「カネ余り」の終わりの幕開け。それでも日経平均は4万円を目指す=矢口新

リスク1:日銀のマイナス金利政策継続の悪影響

2016年、金融庁は平成27事務年度の「金融レポート」で、「地域銀行の顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)の利益を推計・試算し、2025年3月期には約6割で当該利益がマイナスになる」との試算結果を示した。

2017年3月期決算を踏まえた直近の「金融レポート」では、「前期と比べ、貸出利鞘が縮小し、役務取引等利益も減少するなど、顧客向けサービス業務の利益は過半数の地域銀行でマイナスとなっており、平成27事務年度の推計・試算を上回るペースで減少している。現状、地域銀行のバランスシートの健全性に問題があるわけではないが、多くの地域銀行で顧客向けサービス業務の収益低下が続くといった収益性の問題を抱えている」と、指摘した。

つまり、(借り手が貸し手から金利を受け取る)マイナス金利政策による悪影響は、貸し手である銀行の収益を直撃し、2025年3月期どころか、既に2017年3月期に大半の銀行が赤字となった。
※参照:平成28事務年度「金融レポート」(PDFファイル)

「金融レポート」は銀行に関するものだけではなく、142ページにわたるものだが、預金取扱金融機関(銀行等)を中心に、要点だけを抜粋する。

A)環境

1)世界経済は、2008-9年の金融危機以降、各国において緩和的な金融政策が採られたこと等から、回復基調にある。

2)この間、国際的な金融規制の強化が進められたこと等から 銀行セクターはその資産規模を縮小させているが、ミューチュアルファンド等のノンバンクが大きく資産規模を拡大させている。

3)また、世界的に低金利環境が継続しており、そうした中、より高い利回りを求める投資行動により、流動性の低い資産や低格付けの資産に対する投資が拡がっている。足下、世界経済は緩やかに回復しているが、リスク性資産の価格は世界経済の成長を上回るスピードで上昇傾向にある。

(矢口注)この辺りの認識は私も同じで、(1)膨大な資金供給が景気を緩やかに回復させている。(2)ボルカールールなどにより、銀行は預金勘定での投機を縮小し、ファンドでの運用を拡大した。(3)カネ余りと低金利政策に伴う運用難で、リスク資産が大幅に買われている。

B)銀行等

1)収益動向を見ると、その主体である資金利益は、

主要行等では、国内業務部門において、継続的な貸出利鞘の縮小に伴って減少が続いているほか、国際業務部門においても、外貨調達コストの上昇等により、前年度に引き続き減少した。

地域銀行でも、貸出残高は増加しているものの、一層の貸出利鞘の縮小によって、資金利益の減少が続いている。

2)預金取扱金融機関の円金利リスク量を見ると、主要行等は横ばいで推移する一方、地域金融機関は徐々に拡大傾向にあり、自己資本対比では主要行等と比較して、地域銀行は約3倍、信用金庫・信用組合は約4倍となっている。

3)金利の低下が、我が国の預金取扱金融機関の資金利益を押し下げている。現在の金利環境が続くと、今後においても、金融機関が保有する比較的高い金利の融資や債券が次第に低金利の融資・債券に置き換わり、資金利益の低下圧力が継続することが予想される。

他方、現在の金利環境や資産価格を前提として有価証券運用や不動産関係の融資でリスクを取る動きがみられる。世界的な経済・市場の動向に不確実性がある中、予期せぬ金利の上昇や資産価格の下落に直面しても、自らのバランスシートが大きく傷つかないよう金利リスク等の適切なリスク管理が重要である。

4)3メガバンクの国際業務部門においては、過去10年間に貸出金が約3倍に増加するとともに収益に占める割合が20%台半ばから約40%に上昇するなど、グローバルな経済・市場環境の動向からの影響が以前に比べはるかに大きくなっている。

5)外貨貸出が外貨預金・外貨建社債等を超過している構造は変わらず、米ドルなどの調達コストは高止まりしている状況に鑑みれば、外貨調達の安定化への取組みや外貨流動性管理の高度化は引き続き重要な課題となっている。

(矢口注)カネ余りと低金利政策とで、国内の運用先からは利益が見込めず、海外やリスク資産に活路を見出している。これは、(直接投資に伴う)為替リスク、外貨調達リスク、金利リスク、信用リスク、流動性リスクなどが増えていることを示している。また、国内ではアパート・ローンやカード・ローンを大幅に拡大したことが問題ともなった。

C)地銀等

1)具体的には、地域銀行全体として、

ⅰ)金融緩和政策の継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下している。

ⅱ)金利の比較的高い既存貸出の返済・借換や保有債券の償還が進み、金利の低い足下の新規貸出や債券に置き換わるため、貸出金や有価証券全体の利回りが低下

ⅲ)中長期的にも生産年齢人口の減少により借入需要が低下し、貸出残高が減少する一方、預金保有残高の多い高齢者の割合が増加するため、預貸率が低下する。

2)地域銀行においては、預貸率の低下に伴い、収益に占める有価証券運用の割合が高まっており、リスクテイクに見合った運用態勢リスク管理態勢の構築がこれまで以上に重要となっている。

3)こうした中、顧客向けサービス業務の利益がマイナスとなっている地域銀行の多くは、有価証券運用による短期的な収益への依存を一段と高めており、その結果、金利リスク量が増加している。

一部の地域銀行においては、以下のような事例が認められた。

ⅰ)当期純利益を確保するため、投資信託の解約益や債券・株式の売却益(益出し)に大きく依存している事例。

中には、購入した株式「ブル型ファンド」と「ベア型ファンド」のうち、利益が出るファンドのみを売却する一方で、含み損の損切りを先送りしている事例。

益出しが当期純利益に占める割合の分布(2017年3月)※出典:金融庁

ⅱ)利息配当金収入の増加を図るため、市場環境の変化によっては、将来的に大きな含み損を抱えるリスクを十分考えずに、残存期間が極めて長い債券や投資信託への投資を拡大し、金利リスク等を増加させている事例。

ⅲ)構造的に預貸率が低く、自ずと有価証券運用による収益への依存が高まる中、リスクテイクに見合った運用態勢やリスク管理態勢が不十分であり、専門人材の育成・確保等を含めた態勢の強化を図る必要がある事例。

本業では過半数の地銀が赤字なのだが、こうした益出し(例:株式「ブル型ファンド」と「ベア型ファンド」のうち、利益が出るファンドのみを売却する一方で、含み損の損切りを先送りなど)で、黒字決算としているのだ。過半数の地銀が営業赤字なので、益出しに収益の30%以上を依存している銀行が56行(53%)、うち半分以上を依存している銀行が38行(36%)もある。

ちなみに上記の、含み損の先送りは指導の対象になると思う。となれば、指導を受けた銀行の来期は、営業赤字の上に、含み損の実現化で、大赤字は免れないのではないか? 指導の対象にならないとすれば、指導できないほど、こうした決算数値の操作が横行していることになる。一方、含み益を計上せずに先送りすると、脱税と見なされるので、基本的には行われていないと考えられる。

地銀の過半数が本業で赤字。赤字の穴埋めは一か八かの博打の「益出し」。生き残りにはリスクを取るしかないが、それでは銀行業の「安全、安定」を損なう。これ以上の緩和政策の継続は赤字を拡大させるだけ。一方で、緩和を止めれば、回復基調の経済が失速。こういうのを八方塞がりと言う。

このコラムの書き出しで、日銀のマイナス金利政策は「近未来から中長期にかけての(破滅的な?)悪影響は必至なのだが、少なくとも2017年中は、大きな問題とはならなかった」としたが、メガ銀行の国内業務と、「地銀の過半数が本業で赤字」というのを、大きな問題ではないと言うのではない。少なくとも、金融市場は平穏だっただけだ。

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とはいえ、こうしたことが長引いて良いはずがない。仮に2018年の金融市場が平穏だったとしても、日本の金融システムは、マイナス金利政策により根元から腐ってきていると考えていいだろう。

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