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リスク3:トランプ政権が導いた米国の孤立

トランプ政権となって、米国が世界で孤立し始めた。手始めがTPPからの離脱だった。パリ協定からの離脱では、同政権は米国内でも孤立化した。そして米国にとって、あるいはもっと深刻なことは、国連が米国による「イスラエルの首都をエルサレムとする提案」を、拒絶したことだ。それに先立つ、国連安保理では、エジプトが提案した「撤回勧告」に、米国以外のすべてが賛成した。

国連安保理は12月18日、エジプトが提出した「エルサレムをイスラエルの首都と認定したトランプ米政権を非難する決議案」を採決したが、米国の拒否権行使によって否決された。日本を含む14理事国は中東和平を揺るがす米国の決定は一方的だとの理由で賛成したが、米国1国の反対で廃案となった。

国連総会は21日の緊急特別会合で、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定した決定は無効とする決議を賛成多数で採択した。賛成票は128カ国。9カ国が反対票を投じ、35カ国が棄権した。

なお、トランプ大統領は投票に先立ち、賛成票を投じた国への資金援助を打ち切ると牽制したが、圧倒的多数が賛成票を投じた。一方、被援助国のグアテマラは25日、エルサレムに大使館を移すと表明した。

これがどうして深刻なのかは、以下の関連コラムを読んで頂ければ分かる。米国は1991年のソ連崩壊以来、一貫してロシアの孤立化を進めてきた。そのために、ロシアの周辺国を陰に陽に支援し、中近東諸国にも軍事援助を続けてきた。それが、エルサレム問題1つで、オセロゲームのように、一転して孤立化したのは米国となったのだ。

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これ1件だけで本当に米国が孤立したかどうかは分からない。とはいえ、トランプ政権に至るまでの米国が周到に準備してきたものを、一夜にして台無しにしたことは疑いがない。これでは、トランプ大統領が陰ではプーチン大統領と繋がっているという見方すら、根も葉もないとは言えなくなる。

リスク4:地政学的リスク(中近東と東アジア)

世界は軍拡競争に方向転換したように見える。各国が次の戦争に備え始めたという意味では、地政学的リスクは今までになく高まっている。大量の武器は、小さな紛争を大きな戦争にしかねないからだ。

ところが、トランプ大統領によるエルサレムの首都認定で、一時的に高まると見られた中近東の地政学的リスクが、そうとも言えなくなってきた。上記コラムで指摘したイラン包囲網の国々が、米国に表立って逆らったからだ。

トランプ大統領は、米国に反対すれば経済支援・軍事支援を打ち切ると牽制したが、それでも各国は反対した。ここで米国が本当に支援を打ち切れば、周到に築き上げてきたイラン包囲網が崩壊する。これでは、米国は簡単にはイランを叩けないので、中東情勢はより混沌としてきたと言える。

原油市場でも、増産で孤立しつつあるのは米国だ。

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東アジアでは、内側に大問題を抱えた中国の対外進出が最も大きなリスクだ。北朝鮮は、米中が本気で現体制を排除する気持ちを固めたなら、できないということはないのだろうが、まだまだ利用価値があるのだろう。金正恩委員長の綱渡り外交が続く見通しだ。

Next: リスク5:中国の金融政策(通貨と金融政策)

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