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2018年「カネ余り」の終わりの幕開け。それでも日経平均は4万円を目指す=矢口新

リスク5:中国の金融政策(通貨と金融政策)

IMFは、2015年10月から2017年9月までの約2年の長期にわたり中国の金融システムを精査した結果、世界第2の規模を誇る経済を失速しかねない、主な3つの緊張要因を発見した。これらの要因は、同国が世界の工場としての役割から、より近代的な消費者主導の経済に移行する過程で浮上したとされる。

1つ目は、政府主導の計画経済により規模を拡大したものの、利益が見込めず、破綻もできない、ゾンビ企業の急増だ。これらの負債は増え続けている。GDPに対する債務残高は2011年の180%から、2017年6月末には256%に急増した。それらの生産性の伸びは低下し、銀行の不良資産が増大している。

2つ目は、シャドウ・バンキングだ。個人から直接資金をあつめるこれらの投資ファンドは、銀行に比べて規制が緩く、当局が実態を把握しきれていない状態だ。

3つ目は、国営や地方政府の金融機関が、政府支援を当てにして、過剰なリスクを取っていることだ。個人にリスク商品を販売する際にも、それら金融機関は損失補填を行い、そのツケを国や地方の政府にまわしている。

中国人民銀行は、IMFの一部の指摘に反論しつつも、これらが中国の金融システムの問題であることは認めた。1つの反論は、IMFが調査33銀行中、27行が資本増強の必要があるとしたのに対し、中銀は、概ね安全だとした。

一方でIMFは、中国の金融システムは2年間の調査期間中にも、改善の兆しが見られたと評価した。
※参考:China’s financial system has three important ‘tensions,’ the IMF says

中国が大きな問題を抱えていることは疑いのない事実だ。上記の指摘の他にも、一人っ子政策による少子高齢化の急速な進展や、世界の工場としての中国経済の成長を安価な労働力で支えてきた農民工への処遇などは、国の根幹を揺るがす大問題で、しかも、解決に緊急を要している。

農民工の問題では、現地で長らく生活し、農民工を観察し続けた山田泰司氏の新著が非常に興味深い。私はジャーナリストには、こういう姿勢を貫いて頂きたいと思っている。実際に取材した事実の報道のなかにも、歴史的な背景や普遍性を探り、何故こうしたことを報道する意味があるのかを感じさせるものだ。
※参考:『3億人の農民工 食いつめものブルース』著:山田泰司/刊:日経BP社

中国は金融引き締め(=正常化)に向かっている。中国元は米ドルにほぼ連動しているので、米国の金融政策が正常化に向かえば、追随するか、完全変動相場制に移行するかの選択に迫られる。変動相場制は、市場が為替レートを決めるので、中国の計画経済とは相容れない。つまり、現体制での選択肢は1つだ。

1994年以降に起きた通貨危機は、いずれも米ドル・リンク通貨で起きた危機だった。変動相場制ならば、小さな危機の頻発を通貨変動が吸収することで、プラザ合意など恣意的に動かさない限り、危機的な値動きには発展しない。一方、ポンド危機はEMSへのリンク、スイスフラン危機はユーロ・リンクから起きた。

米ドル・リンク通貨国は、米連銀が金融緩和を行い、米ドルが下落している間は、共に金利安、通貨安の恩恵が得られる。危機前の国々は時には奇跡と呼ばれるほどの経済成長を謳歌しているので、債務残高も大きくなっている。ところが、米連銀が引き締めに転じ、米ドルが上昇し始めると、対他国通貨では今度は通貨高となってしまう。米国より強い経済ならば何の問題もないが、弱いと、通貨高や高債務に耐えられない所から順に危機的となる。

米連銀は1992年9月から1995年6月まで政策金利を引き上げる。ドル指数が上げ始めるのは1995年8月からだが、通貨を米ドルに連動させる国々は、米連銀同様に引き締め政策を採ることになる。そうした引き締め政策での高金利や、通貨高に耐えられない経済が、順次、経済危機を迎えることになったのだ。通貨危機は1994年末のメキシコに始まり、1997年7月のアジア諸国、1998年8月のロシア、1999年1月のブラジル、2002年1月のアルゼンチンと続く。この間、ドル指数は上げ続けた。

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その後下落したドル指数は2011年7月に大底をつけ、2014年8月からは上昇の勢いを強めている。目先はもたついているが、米連銀の引き締め政策で、上げ基調を回復する可能性が高い。

米国と同様、中国も引き締め政策に転じている。以前に通貨危機を経験した国々に比べ、中国経済は強いかも知れないが、債務の大きさは同様だ。高金利、通貨高、デレバレッジによる景気減速で、これまで以上に不良資産が増え続けると、金融システムが持たなくなってくる可能性が高い。

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