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2018年の相場を予想しつつ「今年っぽいポートフォリオ」を考えてみた=田中徹郎

<(3)現物資産とヘッジファンド>

アメリカは、市場に供給してきたQEマネーの回収をやっと始めましたが、ここまで述べてきた理由で、その回収速度を上げるとは思えません。ヨーロッパではテーパリング体制に入りましたが、マネーの供給量を減らすにすぎません。日本に至ってはテーパリングすら禁句の状態で、いまのところQEを停止できるめどすらたっていません。

重要なのは現在のように世界経済が順調に拡大を続ける環境下ですら、このような状態にあるという点ではないかと思います。このような状態で、仮に世界が再び循環的な(あるいは何らかのショックによる)経済下降期に入ってしまえばいったいどうなるのでしょうか。

日米欧は再びゼロ金利とQEに逆戻り、世界はさらにペーパーマネーであふれることになるはずです。

このような懸念によって、すでにペーパーアセットの対する信認は低下しつつあり、紙幣をたくさん持っている人たちは、その一定部分を中央銀行の政策から隔離された資産、すなわち現物資産への分散しておこうと考え始めているように見えます。

そのような観点で、今年1年という短期の時間軸ではなく、長期的な視点での現物資産への分散は、私たちにとって大きなテーマであり続けるでしょう。

具体的な対象物を挙げるとすれば、多くに人が持ちたいと考える現物資産…実は現物資産はペーパーアセットに比べ種類や量が限定されるのですが、例えば都心の優良な不動産貴金属コインジュエリーなどです。

なかでも僕がお勧めしたいのは「中国人が好む資産を先回りして買う」というスタンスで、これは本稿の前半に書いた『僕は最近中国経済が(僕が以前予想していた崩壊もなく)、順調に拡大を続けるというシナリオも持つようになりました。』という考えに基づいています。

確かにアチコチ移り気な人たちのように感じますが、彼らのお金儲けに対する執着心は、私たちのような生ぬるい隣人とは違ってケタ外れです。通貨に対する信認が低いせいか中国人の現物志向は強く、ヒスイやルビー、スピネルなどのカラーストーン、あと中国コインや紙幣なども好みます。

今年1年という短期の時間軸ではなく、長期的視点でこのような現物資産に、今年も注目してゆきたいと思います。

ヘッジファンドに関して言えば、今年もマネージド・フューチャーズはあまり期待できそうにありません。

  • 世界的な低金利傾向
  • 中期トレンドの消失傾向
  • 相場間の相関性の低下など

どれをとっても同戦略にとってマイナスです。

一方でボラティリティから収益を上げるタイプの戦略や、裁定取引型の戦略が優位を維持する可能性が高いと思います。

<(4)債券>

アメリカ経済に対する期待のふくらみや、FRBの利上げ継続予想などもあり、昨年末以来ジワジワ米国債の利回りが上昇しており、現在の長期債(10年物国債)の利率は2.5%を超えてまいりました。

一方で政策金利(銀行間で資金を融通しあうための超短期金利)のほうはといいますと、直近6回の利上げの結果1.5%まで上昇しており、その影響もあり例えば米国債(3年物)金利は直近で2.1%に接近中です。

長短金利の逆転もありえますが、おそらく政策金利の上昇に引っ張られ、長期金利もある程度は上がるのではないかと思います。10年債利回りで申し上げるなら、今年中に2.8%はあると思います。

もしそのようなピッチでアメリカの金利が上がれば(債券価格は下落)私たちの運用にどのような影響があるのでしょう。

例えば、すでに米国債をお持ちの方は、債券相場の下落によって含み損状態になります。特にETFや投信経由で米国債をお持ちの場合、少し精神的にきついかもしれません、もちろん定められた利子は、債券の時価とは関係なく支払われますが…。

このような環境下では、時間的な分散投資が有効でしょう。日本人の生活にも影響が出てくるかもしれません、さきほどもお話ししましたが、今年の特に年末あたりには日銀の政策変更があるかもしれません。例えば、量的質的緩和(QQE)の出口の模索、あとは金利の誘導目標の引き上げです。

仮にこのような政策変更が起きた場合、金利の(緩慢な、あるいは急速な)上昇が起きるでしょう。例えば、多額の住宅ローンを変動金利で借りている人たち、あるいは身の丈を超えたアパートローンを借りている人たち…。このような方はチョットまずいことになります、そろそろ対策を持っておくことをお勧めいたします。

<(5)仮想通貨>

最後に仮想通貨について少しだけ。「ビットコインに代表される仮想通貨バブルがいつはじけるのか?」。よくこのような質問を頂きますが、僕には予知能力はありません。いつバブルがはじけるかはわかりませんが、ビットコインバブルは過去の同様な現象と比べても、相当大きな規模に達していることは確かです。

小さく膨らんだ風船は小さく破裂し、大きく膨らんだ風船は大きく破裂する…。少し予言めいた表現になってしまいましたが、この簡単な物理現象は、金融の世界でも当てはまります。

Next: 2018年型推奨ポートフォリオのまとめ

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