fbpx

必然だった2月の調整。巨匠ピーター・リンチなら今の株価をどう見るか?=東条雅彦

ピーター・リンチ・チャートで振り返る米国の株式相場

1880年から20年区切りで、S&P500の株価とピーター・リンチ・チャートを見比べていきます。このピーター・リンチ・チャートを確認することで「株価は決してデタラメに動いているわけではない」ということが視覚的に理解できるはずです。株価は各年の12月末時点の値となっています。

<ピーター・リンチ・チャート(1880年~1899年)>

180227tojo_3

1880年代・1890年代のS&P500は、概ねピーター・リンチ・チャートと足並みを揃えて動いています。つまり、S&P500は企業純利益の15倍の価格で推移していたことになります。1987年10月19日にブラックマンデーが発生していますが、年単位で見ると、ほぼ無傷です。株価も少し上げる時はあっても全体的にはヨコヨコで推移しています。

<ピーター・リンチ・チャート(1900年~1919年)>

180227tojo_4

1900年代のS&P500は、概ねピーター・リンチ・チャートと足並みを揃えて動いています。1910年代の後半から、S&P500はピーター・リンチ・チャートを大きく下回るようになっています。

第一次世界大戦が1914年7月28日から1918年11月11日にかけて行われています。戦争の特需によって、企業利益が1915年、1916年、1917年と急速に上昇していますが、世間の人たちは投資どころではなかったのでしょう。株価の方がまったく追いついていません。

1910年代・1920年代は共に、S&P500は横ばいまたは下落基調です。今でこそ「長期投資で資産を築ける」と考えている人が増えてきましたが、この20年間については投資するには悲惨な期間でした。長期投資だったら成功するとは限らないという好例だと思います。

<ピーター・リンチ・チャート(1920年~1939年)>

180227tojo_5

1920年代・1930年代のS&P500は、概ねピーター・リンチ・チャートと足並みを揃えて動いています。1929年から1941年までは世界恐慌の期間で、景気はよくありませんでした。ただ、株価の方は企業利益とほぼ連動していて、健全な期間だったと言えるでしょう。株価の乱高下がとても激しい時代でした。

<ピーター・リンチ・チャート(1940年~1959年)>

180227tojo_6

1940年代・1950年代のS&P500は、全体的にピーター・リンチ・チャートを下回ることが多くなっています。特に、1947年から1953年までは乖離が大きくなっています。1939年から1945年までの6年間は第二次世界大戦が行われていました。戦争が終わってから企業利益が急速に拡大していますが、S&P500にはその企業利益を反映されていない状況になっています。しかし、1950年代の後半に入ると、株価に企業利益が織り込まれるようになっています。

<ピーター・リンチ・チャート(1960年~1979年)>

180227tojo_7

1960年代のS&P500は、ピーター・リンチ・チャートよりも少し高い範囲で推移しています。1973年から逆転して、S&P500がピーター・リンチ・チャートよりも低くなっています。米国経済は1960年代の前半までは概ね順調でしたが、1970年代に入るとスタグフレーション(景気沈滞下のインフレ)が誰の目にも明らかになってきました。

1971年に米国のリチャード・ニクソン大統領がドルと金との交換を一方的に停止しました(ニクソン・ショック)。1944年から続いたブレトンウッズ体制(金とドルとの交換を
前提とした固定相場制)が一気に崩壊して、変動相場制に移行していきます。通貨が「お金」から「紙幣」に成り下がって、ゴールドが「真のお金」に切り替わるという劇的な変化があった時代です。

<ピーター・リンチ・チャート(1980年~1999年)>

180227tojo_8

1980年代のS&P500はピーター・リンチ・チャートと概ね一致しています。1985年にはプラザ合意があって、2年後にはドルが約半値に切り下がっています(1ドル=240円台から120円台)。これは米国の「双子の赤字(=財政収支と貿易収支の赤字)」を解消するためです。

米国は昔から自国の経済がピンチになると、強引な手法で経済を立て直していきます。ドルの価値が半分になれば、財政赤字が半分になって、輸出競争力が向上します。このプラザ合意によって、日本経済は壊滅的なダメージを受ける一方で、米国経済は急速に回復していきます。

S&P500は1995年から大きく上昇し始めます。この年はマイクロソフトが「Windows95」を大ヒットさせた年です。ここからいわゆる「ドットコムバブル」が始まります。S&P500はバブルが崩壊する2000年まで一直線に上昇し続けます。この時代は株式投資をするには「最適な時代だった」と言えるでしょう。

<ピーター・リンチ・チャート(2000年~2017年)>

180227tojo_9

2000年代の初頭はドットコムバブル崩壊の影響で、S&P500は大暴落を演じますが、2002年に底打ちして、徐々に復活してきます。2000年代・2010年代は共に、S&P500はピーター・リンチ・チャートよりも高い値を示し続けています。リーマンショックのあった2008年は企業利益が大きく減ってしまったため、ピーター・リンチ・チャートは大暴落しています。もちろん、S&P500も暴落していますが、それでもピーター・リンチ・チャートよりも上の範囲で推移しています。

そして、注目すべきは近年の動きです。リーマンショックから株価が回復していますが、2014年頃からピーター・リンチ・チャートとの乖離がどんどん大きくなってきています。2014年、2015年、2016年、2017年と毎年のように乖離が広がってきており、「ミニバブル」状態でした。

Next: 2018年2月の株価下落は必然だった?

1 2 3 4 5 6
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー