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トランプ劇場が招く米株安。米中貿易戦争の長期化でダウ平均2万ドルも=江守哲

中国を狙い撃ちするトランプ大統領

さて、今回の関税問題ですが、トランプ大統領は通商法301条に基づき、中国の知的財産権侵害に対する貿易制裁の発動を決定しました。これにより、中国からの幅広い製品に年600億ドル規模の関税を適用することになります。

トランプ大統領は昨年8月から中国との貿易の実態調査を進めてきた米通商代表部(USTR)に対して、制裁対象になり得る製品のリストを15日以内に公表するよう命じました。また、米国は通商法301条による制裁とは別に、中国を世界貿易機関(WTO)に提訴する可能性があります。

米国の17年の対中貿易赤字は3752億ドルと全体の半分を占め、過去最大を記録しました。USTRは、中国に進出した米国企業が技術移転を強要されている慣行などが知的財産権の侵害に当たるとして問題視しています。

トランプ政権は、対外貿易赤字の是正を公約に掲げており、実際に制裁を発動することで、最大の赤字相手国である中国を関税の引き上げなどで解消を狙う構えです。

通商法301条は、「不公正貿易」があると判断した場合、大統領の権限で制裁措置が取ることができます。日米貿易摩擦が激化した1980年代には、措置の発動をちらつかせながら、対日通商交渉で譲歩を引き出す手段として使われた経緯があります。

しかし、当時といまとでは、経済規模が全く違うため、比較はできません。今回の方が影響ははるかに大きいと言わざるを得ないでしょう。

日本もダメージを受ける

トランプ政権は通商拡大法232条に基づき、安全保障上の脅威を理由に23日から鉄鋼製品に25%、アルミ製品に10%の追加関税を適用しました。

通商代表は22日の上院財政委員会で、当面は適用を除外する対象をカナダ、メキシコ、EU、豪州、アルゼンチン、ブラジルと韓国の7カ国・地域としました。

また、日本は「除外対象リストに入っていない」と明言しました。これにより、日本は輸入制限の除外対象にならず、新たな関税率が適用されることになりました。

こうした制裁を目的にした一方的な措置はWTOルールに抵触する可能性が高く、保護主義色を強める米国と貿易相手国の溝は深まる可能性が指摘されています。

輸入制限の主な標的は中国ですが、米国は多くの同盟国も関税の適用対象としています。当面は除外されるEU、韓国などにも今後の協議次第で適用する可能性を残しており、安全保障と経済の両面で貢献を促すことになりそうです。

さらに日本に対しては、「適切な時期に自由貿易協定(FTA)交渉を始めたいと日本に伝えている」としています。

一方で、米国は自国で調達が難しい特定製品の関税除外を検討しており、米商務省が19日から申請を受け付けています。これにより、最長90日の審査で除外する製品を決める見通しです。

さて、ここまでトランプ政権が強硬姿勢を貫くには、どのような理由があるのでしょうか。

Next: なぜトランプ政権は保護主義政策を強引に進めるのか?

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