バフェットの代表的「永久保有銘柄」のコカ・コーラ。最近は業績が停滞し、EPSはこの5年で32%も減少しています。それでもなぜバフェットは持ち続けるのでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
バフェットは株価を気にしていない? 永久保有の本当の意味とは
同じ銘柄を持ち続ける意味はあるか?
実は、私はウォーレン・バフェット流の投資を目指していながら、彼の代表的な以下の言葉を本当の意味で理解できないでいました。
「いい銘柄を見つける」「いいタイミングで買う」までは理解できました。しかし、「いい会社である限りそれを持ち続ける」という点については、どうにも腑に落ちていなかったのです。
バフェットの師であるグレアムのバリュー投資は、「本質的な価値よりも割安な価格で買い、割高になったら売る」ことを基本原則としています。本質的な価値以上に上昇することは前提としていないため、「持ち続ける」ことは理に適っていないように思えたからです。
持ち続けることで事業環境の変化などさまざまな困難が待ち受けます。それが会社の事業にとって致命的なことであれば、いくらいい銘柄でも本質的な価値の低下は避けられないからです。
もちろん、そうならないようにバフェットは「経済の堀」を持つ企業のみを「永久保有銘柄」としているのですが、そのような企業もいつまでも成長し続けることはなく、いくら安定していても株価が上昇しなければ意味がないと思っていました。
「益回り」で考えると、バフェットの投資が見えてくる
しかし、改めてバフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの年次報告書を読んでいるうちに、バフェットの根本的な考え方の違いに気付かされました。結論から言うと「バフェットは株価をほとんど気にしていない」のです。
年次報告書にあるバークシャーの株主に宛てた「Owner’s Manual」には以下のようなことが書かれています。
年次報告書のどこを見ても、株を売買して利幅を取ろうという話はどこにも書いてありません。ただひたすら「いいビジネスを適正な価格で買う」ことに焦点が当てられています。見るべきは株価ではなく、1株あたり利益や、利益の蓄積によってできた純資産だと言います。
株価を気にせずに、保有する株式がどれだけの利益を生み出すかを考える姿勢は、まさに事業オーナーそのものです。先日投稿した記事では、「純利益はオーナーのもの」と指摘しましたが、バフェットの考えも不動産投資に近いのではないかと思います。
上記の記事にもある通り、純利益をオーナーの利益だと考えると、純利益の金額が安定しているとしてPER10倍の株式の利回り(益回り)は10%となります。益回りはPERの逆数であり、PER20倍なら5%です。
PER10倍というと、比較的割安という感覚があります。利回り10%の金融商品はそうそう見つかるものではないことを考えると、その感覚に間違いはないでしょう。
問題は、この純利益がどう使われるかです。本質的にはオーナーである株主のものですが、その処分方法は経営者に任されています。一部は配当として株主に還元されますが、残りは原則として次の成長のための投資に回されます。
その投資がうまくいけば、将来的に利益はさらに増えるでしょう。PER10倍で買った株式の利益が2倍になれば、購入価格に対する益回りは20%です。当然株価も上昇するでしょうし、増えた利益をさらに再投資に回すことができます。
もし、それ以上利益が成長しなかったとしても、年率20%の利回りが得られる金融商品など、今どき見つかるものではありません。そう考えると、事業が安定している限り「持ち続ける」ことが資産を増やし続けることに繋がることがわかります。
Next: 優秀すぎるコカ・コーラ。対して、永久保有できる日本株は見つからない…