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ドイツ政情不安が意外な悪材料に。移民問題が回復基調の世界経済に水を差す=馬渕治好

来たる花~今週(6/18~6/22)の世界経済・市場の動きについて

<現在のドイツの政治状況と、今後ありうる展開は?>

ドイツでは、連立与党のうち、メルケル首相を擁するCDU(キリスト教民主同盟)と、CSU(キリスト教社会連盟)は、別の党でありながら1949年からずっと提携してきたため、あたかも1つの党派のように見なされることが多いです。現在の連立政権は、この両党と、SPD(社会民主党)との「大連立」によるものです。

そのCSUの党首であるゼホーファー内相が、移民政策について、メルケル首相に対する批判を強めています。内相は、身分証明を持たない移民や、他のEU加盟国で登録を済ませた後、ドイツに流れ込んでくる移民を、他国に追い出すべきだという主張を強めました。

CSUは6/18(月)に党大会を予定しており、ここで党として、そうした移民に対する強硬姿勢が承認される可能性があります(編注:原稿執筆時点6月17日。ミュンヘンで開かれたCSUの党大会では、移民問題に対する強硬姿勢への支持を確認。ゼホーファー内相は、移民をEU内で最初に登録した国に送り返すことがでできるよう、メルケル首相に対して他のEU加盟国政府と月内に合意するよう求めています)。すると、移民に比較的寛容なCDUとの対立が生じかねません。

そうした情勢が、ドイツの政局に具体的にどんな展開を生じるかについては、次のように多くの可能性が考えられています。

考えられる今後の展開

1)メルケル首相がゼホーファー内相の解任を行ない、CDUとCSUの亀裂が鮮明化する。この解任があってもなくても、CSUが首相の不信任案を議会に提出する可能性がある。

2)不信任案が提出されるとして、それがすぐだという展開もあるが、6/28(木)~6/29(金)のEU首脳会議を、CSUが待つこともありうる。ここでメルケル首相はEU加盟国全体に対し、移民政策を再考することを呼びかける意向で、EUがある程度移民の規制に同意することになれば、CSUが矛を収めることも考えられる。

3)不信任案が議会に提出されることになった場合、不信任案が可決され、議会が解散することになると、選挙の洗礼で議席を失うかもしれないと恐れる議員が多く、不信任案が否決される、ということはありうる。

4)ただ、CSU(46議席)が不信任案に賛成すると、他の連立与党のCDU(200議席)とSPD(153議席)では353議席となり、ドイツ下院(連邦議会)の全709議席の半数にわずか達せず、不信任案可決の展開も否定できない。

5)不信任案が可決された場合、再選挙となることがありうる。この場合、選挙結果についての不透明感が強まる。

6)あるいは、不信任案が可決されると、メルケル首相が辞任し、再選挙とならない、という展開もありうる。その場合、CDUの実力者であり、現下院議長のショイブレ氏が首相に就く可能性が高いと見込まれている。この場合は、引き続き3党連立という枠組みが維持されることもありうるため、政治的な不透明感があまり広がらない結果になるかもしれない。

以上のように、様々な可能性が示唆されており、再選挙となって欧州市場中心に揺れる展開は否定はできませんが、落ち着きに向かうこともありえます。そのため、世界市場が大きく波乱に見舞われる公算は限定的だと考えます。

ただ、現時点ではこのドイツの政治情勢についての報道は、もちろん欧州メディアでは多いのですが、日本では少ないです。

また、欧州メディアを含めても、特に単純な事実のみに関する報道(ゼホーファー内相によるメルケル首相の移民政策批判を伝えるだけ、など)で、先行きの展開などを懸念する声が全般に少ないように思われます(BBCなどは、連立政権崩壊の危機だと伝えていますが)。

ですので、悪い方向に事態が進んだ際は、市場が意外感を持って受け止める恐れがあり、注視する必要はあると考えます。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2018年6月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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