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トルコ危機より深刻な「テスラ経営危機」、このままでは米ハイテクブームが終わる=藤井まり子

パウエルFRBの采配に注目が集まる

「アメリカのハイテクブーム」が危機に直面したならば、今後はパウエルFRB議長の采配が注目されることになるでしょう。

今のパウエルFRB議長は、かつての1998年のグリーンスパンFRB議長と同様に、トランプ政権から「金融政策への大転換」へと政策を切り替えるよう「強いプレッシャー」を受けています。

トランプ大統領は大変ずる賢い人物ですから、パウエルFRBが金融緩和政策へと大転換せざるを得ないように、「ツイッター砲」でトルコを追い詰めて、パウエルFRB議長をも追い詰めているのだと思います。

米国経済のリセッション入りなど認めない

いや、もしかしたらひょっとすると、トランプ大統領とパウエルFRB議長はもうすでに「示し合わせている」かもしれません。

「中国との経済覇権をめぐる戦い」にアメリカが勝利するまでは、また「中国製造2025」の野心を中国が捨てるまでは、トランプ政権にしろ、そのまた上のアメリカ上層部にしろ、「アメリカ経済のリセッション入り」は何が何でも回避する必要があります。

アメリカ株式ブームは、中国経済がポシャるまでは、ポシャるわけにはいかないのです。

金融緩和への大転換には「口実」が必要だった

そのためには、パウエルFRBには「イエレン前FRB議長から踏襲した金融引き締め路線」を大転換させる必要があります。

でも、「一私企業であるテスラ救済のためだけに、さらにはアメリカハイテクブームの崩壊を防止するためだけに、FRBが『金融緩和策(=低金利政策)へと大転換』」するというのでは、「FRBの金融政策の正当性」はなかなか証明しにくいわけです。

トランプにとってもパウエルにとっても、テスラ救済のための金融緩和への大転換を「正当化」するのために必要だったのは、「新興国の通貨危機のようなもの」だったのではないでしょうか?

けれども、なかなか新興国で通貨危機は起きなかった。2018年の新興国群は、1990年代に比べるとはるかに実力をつけてきています、新興国通貨危機がなかなか起きなかった…。

こらえきれなくなったトランプ大統領は、最も経常赤字が大きくて最も外貨準備が少なく、しかも経済運営がむちゃくちゃなトルコをあえて「攻撃の対象」にしたのかもしれません。

どこかで「経済危機」が起きればよかった

「攻撃の対象」は、ブラジルでもメキシコでも良かったはずですが、それでは「ショック」は起きそうもありません。8月のトルコだったら危機のようなものは起きるかもしれない。

トランプは確信犯的に最も弱い国を狙ったのではないか。8月にこそ「危機のようなもの」を起したかったのではないのか?

テスラ救済のために、FRBが金融緩和に転じることは「正当化」できないかも知れません。しかし、新興国の混乱や、ユーロ圏の混乱を収拾するための金融緩和ならば、FRBは「金融緩和の正当性」をゲットできるかもしれないのです。

Next: 米利上げ路線の変更もありえる? 注目は8月のジャクソンホールだ

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