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「ふるさと納税」成功しすぎで総務省は許せない? 制度見直しの真意とは

急激に伸びたのは確定申告不要と返礼品

導入当初は、制度活用者はほとんど増えませんでした。ところが2015年を境に、制度利用者が急激に増えました

1つは、2015年4月1日より実施の、確定申告不要となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」創設です。

この制度の細かい解説は省きますが、それまではふるさと納税制度で所得控除を受けるためには、確定申告が必要だったものが、この特例制度により、多くの給与所得者が面倒な確定申告をしなくても控除が受けられるようになってから、ふるさと納税制度利用者が急劇に増えました。よほど日本国民は確定申告が嫌なのですね。

そしてもう1つが、今話題になっている「返礼品」です。

この返礼品は、制度設計当初には想定されていませんでした。寄付者に対して寄付金の額に応じ、主にその地域の特産品を返礼品として送付する自治体が現れ、返礼品の内容をアピールして寄付を募る自治体が増えたことで、ふるさと納税制度利用者は急激に増えました。

地方自治体は返礼品競争とも言われる、寄付金獲得のために、返礼品を工夫するようになりました。地方自治体が、他自治体との寄付金争奪競争に勝つために、知恵を絞って努力しているのです。

返礼品がなくても、地方を応援するという思いの現れもあります。災害地や被災地にあえて納税(寄付)する人たちも増え、西日本豪雨により被害を受けた地域の納税額(寄付金額)は大きく増えました。

何が問題なのか?

ここまでの話で、納付者が自発的に納税先を決めることができ、納税される側の自治体は、他自治体との競争を行い、知恵を出し合って選んでもらう工夫をしているということがわかりました。

総務省が訴える「ふるさと納税の意義」の3つ目「自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと」に合致していますよね。

何が野田総務大臣の言う「制度存続の危機」に当たるのでしょうか。

「返礼品が豪華すぎる…」「返礼品が自治体との関係性がないものになっている…」。ここが今回の指摘されているところかと思われます。

総務省が問題としているのは、「返礼品の調達額が寄付額の30%を超え、地場産品以外も取り扱っている」というものです。実際、総務省は今回の法改正の検討までに2015年4月以降、度々、返礼品の見直しを求めてきています。

ゴルフ道具や家具、家電など自粛を求める品目を具体的に示したほか、返礼品が寄付額の30%を超えないことや地場産品以外を扱わないことなども要請しました。

確かに、地方自治体がその土地とは関係ない「スカイツリー」に関する返礼品を出したり、商品券を返礼品にしたりしているのも見受けられます。

多くの自治体は要請に応じたようで、返礼割合が30%を超える自治体の数は減っていますが、これ応じない自治体もあり、これが「不公平感が払拭できない」という総務省側の発言につながっているようです。

中でも大阪府泉佐野市は、寄付額の50%相当を返戻金にあて、豪華な黒毛和牛山盛り、タオルセット等、カタログを作って好きなものを選べるようにしました。冒頭、野田総務大臣が名指しで批判した泉佐野市は、総務省側の要請を聞き入れない態度を続けています。

返礼品豪華合戦が過熱して、ふるさと納税制度の本来の趣旨が損なわれているというのが、問題としている側の主張のようです。国民の中には、この考えに同調する人もいて「通販みたいで制度を利用しない」という人もいるようです。

でも、これって制度を揺るがす問題と言えるのでしょうか

Next: ふるさと納税に救われた泉佐野市の財政。総務省は正しいのか?

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