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長男の嫁でも介護をがんばれば遺産がもらえる? 民法改正後にやるべき争族対策=山田和美

これから順次施行される民法改正によって、今まで相続の対象外だった「長男の嫁」などにも遺産が行く道筋が生まれました。ただ、介護をがんばれば自動的に遺産がもらえるという話ではありません。どんな制度なのか、変更点と注意点を解説します。(『こころをつなぐ、相続のハナシ』山田和美)

プロフィール:山田和美(やまだかずみ)
1986年愛知県稲沢市生まれ。行政書士、なごみ行政書士事務所所長。大学では心理学を学び、在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナー、個人情報保護士等の資格を取得。名古屋市内のコンサルファームに入社し、相続手続の綜合コンサルに従事。その後事業承継コンサルタント・経営計画策定サポートの部署を経て、2014年愛知県一宮市にてなごみ行政書士事務所を開業。

民法改正で相続はどう変わる?「居住権」ほか変更点と対策まとめ

もう「長年連れ添った妻が路頭に迷う…」は無くなる?

相続のルールを定めている民法の改正案が今年7月に成立し、今後2年以内に順次施行される見込みです(※編注:法務省は11月21日、「配偶者居住権」創設に関する規定の施行日を2020年4月1日と発表。居住権以外は原則2019年7月1日施行としています)。

このうち、新設される「配偶者の居住権を保護するための方策」については、以前も当メルマガで概要を解説しましたが、少し情報もまとまってきましたので、今回はあらためて解説していきます。加えて、「民法改正で、介護をした人が報われる?」という内容についてもお伝えします。

まず、今回の改正で新設される「配偶者の居住権を保護するための方策」には、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2つが存在します。

それでは、1つずつどのような制度か見ていきましょう。

1. 配偶者短期居住権

例えば、夫である太郎さんが所有する土地建物に、太郎さんとその妻である花子さんが2人で暮らしていたとします。

太郎さんと花子さんには、一郎さんと次郎さんという2人の息子がいました。

この場合、太郎さんが遺言書などを残さずに亡くなってしまうと、自宅の土地建物を含めた太郎さんの財産は、いったん法定相続人である花子さん・一郎さん・次郎さんの共有になります。

このあとこの3名で、太郎さんの財産のうち「自宅の土地建物は誰がもらおう」「銀行預金は誰がもらおう」などと、決めていくわけです。

財産分けの話し合いである遺産分割協議は、まとまらなければ長期化する可能性があります。

この間、法律的には、花子さん・一郎さん・次郎さんの3人の持ち物である自宅不動産を花子さんがひとりで使えてしまっている、という状況です。このときの取り扱いについて、これまでの法律には規程がありませんでした。

そこで創設されたのが「配偶者短期居住権」です。

これにより、太郎さんの死亡から6カ月、または遺産分割協議がまとまるまでのいずれか遅い日まで、花子さんは無償で自宅に住み続けることができるようになります。

また、仮に太郎さんが「自宅の土地建物は長男の一郎に相続させる」との遺言をのこしていた場合でも、花子さんはいきなり追い出されてしまうのではなく、明け渡しの請求をされてから6カ月間は、その家に住み続けることができます

これが、配偶者短期居住権です。

Next: 残された妻も安心? もうひとつの居住権「配偶者居住権」とは

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