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将来はアート作品が株式証券化する?ブロックチェーンを活用した芸術分野の未来とは=高島康司

ブロックチェーン適用のエリア

アート分野でブロックチェーンの導入が期待されている分野は、次の4つだ。

1)所有権と来歴の記録

アートは、特に中間業者の介在が多い分野だ。それらは、アートディーラーや美術商、そしてアートギャラリーなどだ。どんなアートの作品でも、こうした多くの中間業者を介して市場に出てくる。信頼できる中間業者の存在は、アート作品のオリジナリティーを証明するためには重要だ。

他方アートの世界では、贋作は大きな問題である。スイス、ジュネーブにあり、アート作品が本物かどうかを判定する「ザ・ファイン・アーツ・エキスパート・インスティテューション(FAEI)」によると、判定が依頼された作品のうち、なんと50パーセントが贋作か、ないしは間違ったアーティストの作品として登録されていたという。

暗号化されたデジタルデータのブロックを相互につなげ、ネット上に複数存在する分散台帳に記録してハッキングやコピーを防止できるブロックチェーンのテクノロジーは、アート作品のオリジナル性の証明とその来歴、そして所有権の移転の履歴を安全に記録するには絶好の手段となる。どんなアート作品でもブロックチェーンに記録されていれば、スマホのアプリを通して作品の必要な情報が簡単に参照できる。これは、オリジナリティーの証明が価値の源泉であるアート作品にとって、非常に重要だ。

伝統的なアートにおけるオリジナリティーと来歴の記録は、次のようなステップで行うことができる。

a)作品のすべての記録がブロックチェーンに登録されると同時に、作品のオリジナリティーを証明する独自のトークンを発行する。

b)作品が購入されると、所有権移転の証明として、トークンは購入者に渡される。

c)作品の所有者が変わるたびに、このトークンも移転する。

d)こうしたトークンの移転は、すべてブロックチェーンの分散台帳に記録される。すると、トークンの出所が、これを最初に販売したアーティストや美術商のウォレットにさかのぼることができなければ、このアート作品のオリジナリティーには問題があることになる。

2)所有権の分割

伝統的なアートであればあるほど、非常に高価になる。数百億円にもなる名画も数多く存在する。このため、伝統的なアート作品の所有は富裕層に限られ、一般の人々とは縁遠い分野になっている。

このような状況でブロックチェーンを活用すると、高価なアート作品の所有権を分割して、分散台帳に記録することが可能となる。ブロックチェーンはハッキングやコピーが困難なので、高い安全性が確保できる。そのため、ひとつのアート作品の所有権を細かく分割し、それらを比較的に安い価格で多くの人々に販売することができる。購入されたアート作品は、アートギャラリーなど、購入者がいつでも鑑賞することのできる安全な場所に保管される。

3)コピーの防止とオリジナリティーの確保

いまアートは、デジタルな領域で大きく発展している。CGIや写真、そして動画などあらゆるタイプのデジタルアートが大はやりだ。

しかしデジタルアートの場合、コピーがとても容易だ。ネットでは、オリジナルの膨大なコピーが出回っている。人々の良心に訴える以外に、これに対する有効な対処法はいまのところない。

ところが、ブロックチェーンの分散台帳を活用すると、デジタルアートの作品に、それが制作された日時と作者の署名をデジタルスタンプとして刻印することができる。こうすると、ブロックチェーンを参照することで、作品がオリジナルであるかをどうか容易に確認できる。このスタンプがないものは、偽造か違法コピーとして判定できる。

4)仮想通貨による販売

アート作品は、相当に高価になることも多い。これをオークションなどで落札しても、支払い金額の送金に銀行の手数料がかかることも多い。これはコスト的にロスになる。もし仮想通貨による販売と支払いができるなら、銀行に比べると送金手数料は抑えることが可能になる。

Next: 現在のアート分野で活用されているブロックチェーンとは

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