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NYダウが30%下げると金融危機が起こる?米国経済の弱点は高すぎる株価にあった=吉田繁治

米国の世帯負債と企業負債が増えていない理由

連邦政府の財政赤字を原因にして、毎年10年で10兆ドル(110兆円)増えて2倍以上になった政府負債に対して、世帯の負債は1.06倍、企業は1.45倍であり、さほど増えていません。※注:米国連邦政府の赤字の第一は、軍事費の80兆円です

10年で1.4倍になった名目GDP(=商品生産額=国民所得)に対して、2018年の世帯負債は1.06倍、企業負債は1.48倍です。GDPに対する割合は、増えていません。

むしろGDPに対する世帯の負債は減っています。
※注:日本の世帯負債のGDP比60%よりは、46ポイント多い。ローンでの買い物が多いためです。

世帯負債、企業負債が増えていない原因は、08年の時価総額1,000兆円から3,000兆円(2019年2月)に上がった株価のためです。

<45%の中から上位世帯にとって、株は金融資産>

米国世帯の45%は株を持っています。2,000万円分もっていた株が、平均的に3倍の6,000万円に上がれば、半分の3,000万円分を売って、3,000万円を負債の返済に充てることができるからです。

住宅ローンの借入金の返済を3,000万円一括で行っても、株の持ち高は3,000万円残ります。これが米国の、主として上位20%の所得に属する世帯の負債が、増えなかった理由です。

3倍に上がった株価が助けたのです。米国のリーマン危機のからの回復は、株価の3倍への上昇によって果たされています。このとき、大きな働きをしたのが4兆ドルの自社株買いです。

<企業>

企業も3倍への株価上昇の恩恵を受けて、銀行借り入れ依存を減らすことができます。株価が上がる中で、増資新株の発行を行うと、投資家が払う現金が入るからです。

このため企業の負債も、10年でGDPの増加に見合う148%にしか増えていません。

米国の世帯と企業負債の弱点

株価の上昇によって負債を減らしてきた米国世帯と企業は、「株価が下落したとき金融危機」になるという弱点を抱えています。

<18年10月から12月>

3,000兆円の時価が2018年10月から12月24日のように20%下げると、600兆円の不足がでます。30%なら900兆円の金融資産の喪失であり、これは、銀行危機、世帯危機、企業危機になるレベルの損です。

FRBが4兆ドルのドル増刷で作り、日銀がゼロ金利の円で支援した過剰流動性バブルにより時価総額が3,000兆円と大きくなり過ぎているため、周期的・サイクル的な株価の変動幅とも言える30%の下落になると、金融危機が起こってしまいます。

2018年秋の、2か月間での下落幅は20%でした。

<予定していた利上げの停止を発表>

18年秋に、20%の株価バブル崩壊があったため、2018年9月と12月には利上げをしたFRBの議長パウェルが2019年1月末に、「予定していた19年の利上げを停止」と慌てて発表したのです。

<バブル株価のリスク>

米国経済の弱点は、高すぎる(と当方は判断している)株価です。投資家の悲観的な見方が増えると、20%や30%は2か月から3か月で下がる範囲だからです。

Next: 米国にせまる経済危機の原因とは?

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