2009年に発見された鉱床と開発の経緯
ところでベネズエラでは、2009年に当時のチャベス政権は南西部の「ボリバル州」に相当な埋蔵量の「コルタン」を発見したと発表した。その後、2010年にはベネズエラ政府はイランの企業と契約し、調査と試掘を開始した。
そしてマドゥロ政権は、2016年8月に「鉱業投資協定」を締結した。内容についての詳細は分かっていないが、これはベネズエラ政府が55%の権益を持ち、国外の企業に投資を呼びかけるものとなっている。この協定には中国、ロシア、アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカの企業が参加を表明している。この協定の規模は45億ドルを越え、金、ダイヤモンド、そして「コルタン」が開発の対象になる。
さらに2018年10月には、「コルタン」を産出する選鉱プラントを建設した。選鉱とは、採掘した鉱石を有用なものと無用なものに分け、「コルタン」を産出する作業のことである。このプラントは100%、ベネズエラ政府と国内企業の出資で建設された。
そして2019年2月、マドゥロ大統領は「コルタン」の大きな鉱床があり、開発を進めていることを公式に認めた。埋蔵量や鉱床の正確な場所は発表になっていない。開発はベネズエラ政府が主導して行い、アメリカの企業に安く買い叩かれないようにするという。
それ以外に、「コルタン」と同時に、金とウラニウム、そして「カオリナイト」やリン酸などの鉱物の相当な埋蔵量がある。さらに、ウラニウムの開発と発掘は、ロシア企業の技術支援によって行われることも公表された。
アメリカはレアメタルで覇権を失う?
この発表には、中国企業の名前はいまのところ出てきていない。しかし、先の「鉱業投資協定」の内容は公表されていないものの、協定の参加国のひとつに中国が入っている。
一方ベネズエラ政府はアメリカの関与には非常に警戒している。その点を考えると、「コルタン」の開発に中国企業がかかわっている可能性は大きいと見なければならないだろう。
中国はベネズエラに巨額の資金援助をしており、マドゥロ政権を実質的にバックアップしている。トランプ政権の介入を警戒し、マドゥロ大統領とグアイド暫定大統領との争いを両者の対話によって平和的に解決することを提案している。中国もベネアズエラの「コルタン」に強い関心を持っているはずだ。
一方、いまのアメリカの軍需産業が置かれている状況を見ると、ベネズエラの「コルタン」の開発が、中国、そしてロシアの手中に握られることは到底許容できないことである。
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