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大手メディアが報じないベネズエラ紛争の闇~米中覇権争いの背後にある本当の資源争奪戦=高島康司

中国のテクノロジーが持つ圧倒的な優位性

アメリカの安全保障の基礎となり、アメリカの軍事的な覇権を支える最新ハイテク兵器のシステムは、どれも大量のレアメタルを使っている。特に第4次産業革命の進展で次世代のITテクノロジーが急速に発展するにつれ、レアメタルへの依存度は高くなっている。

そして、現在のレアメタルの80%は中国が供給している。特に、レアメタルの鉱物種のひとつで、17種類の鉱物種のレアアースでは中国への依存度はさらに高く、90%に達している。それというのも、レアアースそのものの埋蔵は中国だけではなく、ベトナム、ブラジル、ロシア、インド、オーストラリア、アメリカ、そして日本など各国で確認されているものの、レアアースを原材料として製品化できるレベルのテクノロジーは、実は中国に集中しているからである。

レアアースは鉱石から分離しただけで、原材料として使えるわけではない。メタルや合金、またマグネットなどに加工して、製品化しなければならないのだ。加工の途中で有毒物質や放射性物質が副産物として産出されるため、高度なテクノロジーがない限り原材料として加工できない。

実は、このレアアースの加工でもっとも先端的なテクノロジーを持っているのが中国だ。それはこの分野で申請された特許数を見ると分かる。2011年から2018年の期間を見ると、中国の特許数は250%も増えている。2018年の時点で比較すると、中国が保有する特許数はアメリカよりも2万3,000件も多い。これらの特許の多くは、レアアース、またレアメタルの原材料としての製品化にかかわるものである。

こうした状況なので、アメリカが国内で発掘したレアアースを製品化する場合、中国企業に依頼する以外に選択肢がない状況なのだ。そのような状況を見ると、レアアースの産出地域が増えたとしても、この分野における中国の独占状態は、簡単に変わるものではないことが分かる。

レアアースのサプライチェーンの再構築は困難

レアアースの中国依存がこのように大きい状況で、もし中国によるレアアースを含むレアメタルの全面的な禁輸処置が発動されたらどうなるだろうか?

レアメタルやレアアースの市場価格が高騰するという経済的な影響どころではない。おそらく、アメリカの軍需産業における先端的ハイテク兵器の生産には、大きな支障が生じることだろう。生産そのものができなくなる兵器もあるはずだ。

これは、アメリカの軍事覇権の維持には致命的な弱点になる。実質的に中国は、アメリカの軍需産業を基盤から揺るがす力を持っているといってもよい。

興味深いことに、軍需産業が必要とするレアアースやレアメタルの過度な中国依存の状況が明らかになったのは、トランプ政権になってからだ。

では、こうした状況から脱するために、レアアースのサプライチェーンを再構築すればよいだけだと思うかもしれない。だがこれには、15年はかかると見られている。

トランプ政権は、この期間を少しでも短縮して軍需産業の生産基盤を再構築し、アメリカの覇権を延命させようと懸命だ。中国への高関税の適用、「ファーウェイ」を代表とした中国ハイテク企業の排除など、いわゆる米中貿易戦争やハイテク戦争と呼ばれる動きの本質はこれである。

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