2.遺言書を書くための財産の棚卸し
遺言書には原則として、すべての財産について書いておくのが望ましいです。まとめて書いたり「全財産の3分の1を~」等と書いても無効ではないのですが、実際の手続の際には、たとえばA銀行の預金は誰の口座に入れるのか等、もらう人を特定する必要があるためです。
もちろん細かいものは「その他の財産」とまとめてもよいですが、できるだけ具体的に書くためには、ある程度財産を把握してから書くと良いでしょう。そのためにエンディングノートが活用できます。
また、相続税が心配な方は、この段階で基礎控除額を超えそうかを仮計算してみて、相続税が発生しそうであれば、専門家に記載内容を相談することをおすすめします。
3.手続をスムーズにするためのメモ
相続が起きた後、どこに何があるかわからず困る、というケースは結構あります。その場合、相続人はまず家中の捜索をすることから始めなければなりません。
また、せっかく遺言書を書いても、遺言書がどこにあるか見つけられない場合もあります。こういった事態にならないために、エンディングノートに「どこに何の財産があるか」「遺言書があるなら、どこにしまってあるか」を書いておいて頂くと、スムーズに手続にはいることができます。
またあわせて、債務等がないのであれば「ない」と書いておいていただくと、相続人は安心しますので、これも記載しておくと良いでしょう。
4.想いを伝えるために
これがエンディングノートの一番おおきな役割だと思います。法的なルールがないからこそ、エンディングノートには何でも自由に書くことができます。
- 例えばこれまでお世話になった人への感謝の気持ち
- 例えば遺言書を書くに至った経緯
- 例えば人生で幸せだったこと
- 例えば家訓など、後世にのこしたい想い
こういったことを伝えるのに、ぜひエンディングノートを使われてはいかがでしょうか。
遺言書にも「付言」といってお手紙のような内容を書くことは可能です。なのでもちろん、感謝の気持ち等を遺言書の中に書いても良いです。しかし遺言書は法的な文書であるがゆえに、公正証書遺言なら公証人や証人に、その他であっても、実際に手続に使う際には金融機関の担当者等の手続先に、など、人目に触れることも結構多いものです。
エンディングノートであれば、特段どこかに提出する義務はありませんので、大切な方やご家族に伝えたい想いを、思う存分のこすことができます。
このように、遺言書とエンディングノートにはそれぞれ違った役割があります。それぞれの特性を知った上で、どちらか一方のみではなく、両方セットでのこしておいて頂くことをおすすめします。
『こころをつなぐ、相続のハナシ』(2015年12月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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