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北朝鮮のミサイル発射理由「米国への挑発」はミスリード、裏側にあるメッセージとは=江守哲

真逆の反応を示す米国と韓国

北朝鮮が4日に発射した飛翔体について、国営朝鮮中央通信(KCNA)は5日に、「北朝鮮が金正恩委員長立ち会いの下で4日、東海で多連装ロケット砲と戦術誘導兵器の攻撃演習を実施した」と報じました。そのうえで、「大口径の長距離多連装ロケット砲と戦術誘導兵器」の能力を試すことが目的だったとしています。

一方、この発射に対して、トランプ米大統領は「依然として金委員長との合意実現に自信をもっている」と発言しています。さらにツイッターに「金正恩氏は北朝鮮の素晴らしい経済的潜在性を完全に理解しており、それを妨げたり終わらせるようなことはしない。私が彼と共にいることも知っており、私に対する約束を破りたくはないはずだ」と投稿しています。

米国側に緊迫感はないといってよいでしょう。もちろん、トランプ大統領の発言は、米国の本音を示しているかは疑ってかかるべきであることは言うまでもありません。明確なのは、この段階では何も問題がないということです。つまり、すべてシナリオの範囲内であるというわけです。

一方、韓国大統領府は安全保障担当者を緊急招集し、敵対行為の全面中止を定めた2018年9月の南北首脳会談での軍事合意に反するとして、「朝鮮半島の軍事的緊張を高める行為の中断を要求する」との見解を発表しました。米国の対応に比べると、かなり強硬です。

金正恩もシナリオ通りに動いている?

専門家の中では、ベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談が物別れに終わったのは、金委員長にとって大きな誤算だったとの声が多いようです。トップ交渉で部分的な非核化と引き換えに制裁緩和を直接引き出す狙いでしたが、完全な非核化を求めるトランプ大統領が応じなかったことで決裂したというわけです。

しかし、この見方は正しいのでしょうか。あまりに当たり前の見方です。このような見方が正しいことは、まずありません。そう考えて問題ないでしょう。

一方、金委員長は4月12日の施政演説で、3回目の首脳会談に意欲を示し、「年末までは米国の勇断を待つ」と交渉期限を自ら設定しています。

さらに、これまで袖にしてきたロシアのプーチン大統領とも4月25日に極東ウラジオストクで会談し、「自分の疑問を米国に伝えてほしい」とトランプ大統領への伝言を託しています。

これまでは中国に頼る戦術でしたが、中国が米中通商協議関連で米国から尋常ならざる圧力を受けています。経済戦争を仕掛けられる中、中国に近づくのは賢明ではないとの見方に傾いたわけです。

というのも、これも表向きです。

米国側から、現在の米国の対中政策についてある程度の説明を受けている可能性があります。つまり、中国に近づくと、北朝鮮にとって良くないことが起きることを説明している可能性があります。

Next: 韓国の失政でおかしくなった朝鮮半島情勢、米国も北朝鮮も怒り心頭?

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