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北朝鮮のミサイル発射理由「米国への挑発」はミスリード、裏側にあるメッセージとは=江守哲

トランプの最優先は来年の大統領選

米国は、「名目上は」完全な非核化と制裁の全面解除を一括合意する「ビッグディール」を目指していることになっています。そのうえで、「ボールは北朝鮮にある」とのスタンスを維持しています。

振り返ると、一昨年まではトランプ大統領は金委員長をぼろくそにこけ落としていましたが、第1回目の米朝首脳会談以降、弾道ミサイル発射や核実験が長らく実施されていないことを自身の政治成果として誇示しています。

したがって、国連決議に反しない範囲であれば、表向きの米朝対話を継続する方針を変える必要もありませんし、いまのやり方を継続することができます。

最大のポイントは、来年の大統領選であることを忘れてはなりません。これが何にもまして優先されます。それがいまの米国の基本戦略です。そのうえで、国防を最優先して対処するのが現在の政策です。イラン情勢の緊迫化もその範囲内です。

さて、今後は中国とロシアを巻き込み、北朝鮮を巡る主要国の駆け引きは活発になるでしょう。しかし、それも表向きだけの話です。

静観を続ける日本

6月末には大阪で20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されます。格好の演出の場になります。

G20には米中ロ韓に日本を加えた5カ国の首脳が集まります。中国の習近平国家主席がG20に先立って平壌を訪れるとの観測もあるようですが、これはむしろ自らの身を危険にさらすだけでしょう。

習近平主席がこのことを正しく理解しているかどうか、6月にはかなりはっきりとしてくるでしょう。

日本の対応ですが、いまは静観です。米国に任せています。ミサイル発射時にアフリカを訪問していた河野外相は、ポンペオ国務長官、韓国の康京和外相と個別に電話で協議しましたが、あくまで情報共有が表向きです。

日本政府は飛翔体発射に冷静に対応したことになっています。発射直後の防衛省発表では、日本の安全保障に直ちに影響を与える事態は確認していないと強調し、安倍首相も当時は静養先の山梨県鳴沢村で過ごしています。

森友・加計学園問題で政治が大いに揺れた時、北朝鮮から何度もミサイルが飛んできました。それも、日本上空を超えたものもありました。普通であれば戦争です。しかし、そうはなりませんでした。

これだけでも十分なヒントでしょう。したがって、いまの情勢があくまで表向きのものであることは容易に理解できるはずです。

このように、国際社会にとって、北朝鮮は非常に使い勝手が良いわけです。かなり過激に聞こえるかもしれませんね。

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