日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数は前年同月比0.1%下落となり、2年6か月ぶりに前年比マイナスとなった。これによる金融緩和の可能性を考える。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)
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前年同月比0.1%下落の企業物価指数にみる物価下落の可能性
消費の停滞を恐れ、企業は価格転嫁しずらい状況…
日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数は前年同月比0.1%下落となり、2年6か月ぶりに前年比マイナスとなった。ガソリン、軽油、灯油など石油・石炭製品の下落などが影響した。
本来であれば、川上にある企業物価指数が、川下といえる消費者物価指数に影響を与えることが多い。しかし、現状はそれほど連動性が高いわけではない。特に企業物価指数が上昇しても、企業は消費の停滞を恐れ、それを価格転嫁しつずらいとも言われていた。
ただし、今回は方向性は反対となり、物価の抑制圧力が強まっていることを示している。
米中貿易摩擦などによる影響もあり、世界的な景気減速懸念も強まっている。その影響が日本の国内企業物価指数にも出ているということであろうか。
ここにきての消費者物価指数は前年比で1%に満たない水準で推移している。直近発表された5月分では前年比プラス0.8%となっていた。
日銀の雨宮副総裁は5日の講演で、「今の段階では、標準シナリオは維持している。ただ、さまざまな下方リスクがある。そうした下方リスクで物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる状況になれば、ちゅうちょなく追加緩和を検討していく方針」と述べた。
これが日銀の現在のスタンスであろう。しかし、今回の企業物価指数をみると今後、2%という物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる状況となる可能性もありうる。もしこのままコアCPIの前年比のプラス幅が縮小傾向となった場合に日銀は、どのような行動をとるのであろうか。
ただし、雨宮副総裁の「下方リスク」、「ちゅうちょなく」との表現からは、自然体での物価の下落を想定しているのではなく、何らかのテールリスクにより、金融市場に大きなインパクトが与えられ、経済物価といったファンダメンタルズに影響が確実に出ることが予想された際には、「ちゅうちょなく」行動するとも解釈できるか。
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『牛さん熊さんの本日の債券』2019年7月10日号より
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