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安倍政権が選択したリフレ政策は間違っていた?なぜ、なかなかインフレにならないのか=吉田繁治

社会保障費の赤字は削減しない:事業仕分けの愚を避ける

安倍政権は、国民から不人気になる財政赤字の削減は必要がない。インフレのためなら、むしろ財政を拡大したほうがいい。借入需要が増えても金利が上がらないようにするには、日銀が政府の負債である国債を買って、日銀の負債である通貨に換えればいいだけだとしたのです。

安倍政権には、「これが現代エコノミーだ」と自称するリフレ派エコノミストの進言がありました。政府通貨の発行を説いている「現代貨幣論」にもなっています。中央銀行による国債のファイナンス、つまり政府負債のマネタイゼーションは、大きなインフレになるまでは積極的に行うべきだとするものです。

政府は、「ゼロ金利で生じる流動性の罠」から脱出するための「2%のインフレ目標」を掲げることによって、財政赤字を堂々と日銀にファイナンスさせたのです。これは、通貨の増発を原資にした、社会民主主義の政策でもありました。

(※注)社会民主主義ではありませんが、共産主義のソ連では、「政府通貨が、返さなくてもよく、金利も要らない借金」として国有企業に貸しつけられていました。ソ連の偽装GDPは、政府通貨によって作られていたのです。日銀が行っている国債のマネタイゼーションは、政府通貨の発行とおなじことです。

経済の潜在成長力(潜在的な生産力)が高いときに需要を増加させ、十分に生産力を発揮させる政府通貨の増発は効果を上げます。しかし潜在成長力が低いときは、政府通貨の増発も効果を生まず、単に、通貨安とインフレになるだけです。

(※注)潜在成長力とは、その国の経済の、商品生産力の100%を言います。日銀が試算してる潜在成長率は1%です(2018年)
※参考:需給ギャップと潜在成長率

インフレ目的の、円安誘導ためのドル買い

自民党が政権につくことが確実視されていた2012年末からは、政府系金融(とくに郵貯とかんぽ生命)を使って、ドル国債を買わせ「円安誘導」も行っています。

円安はドル建ての輸出物価を下げ、輸入物価を上げます。輸入物価の上昇分、国内の物価は上がる(円安インフレ)。輸出物価が下がる分、輸出は増えてGDPが増える

副次的には、ドル高によって、対外資産1,000兆円(2018年末)に為替差益分が400兆円くらいはいっています。10%(当時は約8円)のドル高(円安)でも、全体では50~60兆円/年の評価益ですから巨大でした。

(※注)円高/ドル安のときは、逆の評価損になります。

政府系金融による[隠されたドル買い]は2012年11月からであり、金額は30兆円スケールでした。政府の連結のバランスシートにしか現れないようにように隠すのは、中国のような為替操作国と言われるからです。

日銀が、ゆうちょ銀行とかんぽ生命がもつ国債を発行価格より高く買いあげて円を供給する。→ゆうちょ銀行とかんぽ生命はこの円をもとにして、30兆円の「ドル買い/円売り」をして円安を誘導するという方法でした。

円は、2012年の80円から、2013年は100円台、15年には120円台という50%の円安になったのです(19年7月は108円台)。この間のドル建て対外資産の評価益は、ピークで400兆円だったでしょう。

金融機関と、海外に工場をもつ輸出企業、120兆円の外貨準備をもつ政府の評価益です。注意すべきは「評価益」であることです。実際に、ドル建ての対外資産が増えたのではない、GDPの潜在成長力増加の要素ではないことです。国の経済の潜在成長力は、資本の投下、つまり設備投資の増加によってしか増えません。

ところが2000年代の企業は、人口問題からの将来GDPの成長の低下を予想していて、営業キャッシュフロー以下の投資しかしていません。日銀による増加マネーは、世帯の住宅ローンの増加と、企業の借り入れによる設備投資の増加にはなっていないのです。世帯と企業の、借り入れの増加のなさが、日銀が国債の現金化(財政ファイナンスとマネタイゼーション)を約400兆円行ってもインフレになっていない理由です。

クルーグマンの「流動性の罠」から離脱するための、ゼロ金利と財政ファイナンスの処方箋は、人口の高齢化と減少予想から有効需要の増加が見込めない日本経済に対しては、誤っていたのです。

Next: 現在の株価を構成している買いはどういうものなのか?

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