消費税の生活破壊力
消費税の影響は政府が考える以上に大きいと考えられます。
マクロでみると、消費税増税によっても、日本の税収は増えず、GDPに占める税収比率は消費税前の12.7%(1988年度)から昨年度は10.7%に低下しています。消費税増税による景気の悪化で、所得税・法人税が圧迫されるためと見られます。
実際、これまで消費税増税時には相応の規模の対策を講じてきましたが、いずれも期待に反し、景気は悪化を余儀なくされました。
今回も消費税負担額をはるかに上回る「還元」がなされ、景気対策も打たれますが、多くの国民はその「還元」や住宅、自動車での駆け込み対策の恩恵も受けられず、中間層などはまともに消費増税の影響を受けます。
一時的な「還元」や対策で痛み止めを打っても、消費税の負担はその後ずっと続きます。税負担を軽くしようとすれば、消費を抑えるしかありません。景気が冷えるのは当然です。
担税力に応じた税負担、税制を
消費税増税の問題は、一般に「逆進性」が指摘され、つまり低所得者ほど税負担が大きくなる点にあります。
そして、言い換えれば、本来担税力の低い年金生活者や、平均年収が170万円余りの非正規労働者に負担が重くのしかかり、富裕層、資産家の負担は軽微にすみます。所得税住民税が非課税の世帯も、消費税は同じ10%の税率で課せられます。
低所得者や年金暮らしの高齢者には、生活破壊的な影響があります。
その一方で、企業はこの消費税をうまく利用すると、つまり非正規雇用を多用し、消費税の費用控除を利用すると、消費税逃れで利益を得ることもできます。
大企業が自前の派遣会社をつくり、そこから非正規雇用を使うと、正社員の賃金では控除されない「費用控除」が使え、消費者が負担した消費税の一部を「ピンハネ」できます。
企業にとっては、輸出の際に消費税分の「還付」を受けられ、さらに消費税の二重払い防止と称して、費用控除をうまく利用すると、消費税が利益をもたらす面があり、口には出さなくともそれだけ消費税に前向きな企業が多く、企業本位の安倍総理はそれもあって消費増税を決断した可能性が指摘されています。
結局、消費税は本来担税力のない低所得層、年金生活者に大きな負担を強いる反面、企業はその「血税」の一部をピンハネして利益を上げ、おまけに法人税の減税で潤っています。
利益を上げ、担税率の大きな法人の税を軽減し、担税力のない家計から増税で巻き上げる制度が消費税です。つまり、担税力の原理から最も矛盾する税制となります。
それを是正するには、消費税増税を止め、あるいは「れいわ新選組」が提言するように消費税を廃止し、代わって法人税の「抜け道」をふさぎ、所得税や社会保険料負担の累進税率の勾配を急にし、高所得者により多くの負担をしてもらい、株や有価証券売買での利益については20%の分離課税になっていますが、これを総合課税にすると、資産家の税負担も増え、税収の補填になります。
担税力のある人からとる分には、負担も軽微になるはずです。