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堅調な業績が下支えに…しかし、市場が楽観できない4つのリスク要因とは?(8/28)=日暮昭

株式相場は多くの銘柄で下落幅が勝る結果となっており、相変わらず不安定な状況が続いています。そんな中で、注目しておくべき4つのリスクを紹介します。

※「理論株価」についてはこちらをご覧ください。(『投資の視点』日暮昭)

※「理論株価」についてはこちらをご覧ください。

プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

悪材料には敏感に反応して急落、回復は緩やかで下落幅が勝る

リスクと業績のせめぎ合いでリスクオフの境界を行き来する株式相場

株式相場は相変わらず不安定な状況が続いています。悪材料には敏感に反応して急落する一方、その後の回復はいたって緩やか、といった具合でトータルとして下落幅が勝る結果、水準を切り下げる状況となっています。

こうした状況の背景には市場リスクが山脈状態で高止まりするところで、ここにきて新たなリスク要因が顕在化しているという事情があります。現下、目を離せないリスクとして以下の4つが挙げられます。

<1.米中間の貿易摩擦>

米国と中国の貿易摩擦問題は間違いなく世界経済に対する最大のリスク要因と言えます。ここにきて米国が対中国関税を30%へ引き上げ、それに対して中国が報復措置を用意するなど対立は激化の様相を見せています。今後とも最大の相場変動要因となりそうです。

<2.英国のEU離脱問題>

英国はジョンソン首相の誕生によって10月末の期限までに合意できずEUからの合意無き強制離脱という最悪のシナリオがジワリと現実味を増しています。強制離脱の結果、先行きがどうなるのか現時点で全く見えないと言う不確実性の意味で大きなリスクを抱え込んでいると言えます。

<3.対イラン制裁と中東の緊張>

ホルムズ海峡におけるタンカーの襲撃や拿捕事件によって改めてホルムズ海峡の安全航行に注目が集まり、トランプ大統領は受益者が相応の負担をすべきということで有志連合の結成を打ち上げました。対イラン制裁から中東の緊張の火種が一つ増えた形です。

<4.日韓の主張のズレから経済、安保問題に飛び火>

徴用工問題は日本と韓国の間で国としての主張がかみあわず解決が見えない悩ましい問題であったところ、そこから貿易という経済面の問題へ広がり、さらに韓国が突然GSOMIAの破棄を決めたことで安全保障に絡む事態に及んできました。北朝鮮はこの時とばかりに巨大ロケット砲と見られる発射実験を行い、地政学的リスクを含め環境は一段と悪化しています。

一方で、このように最悪とも言えそうな悪い環境下としては株式相場は極端な下落からは免れています。下図は日経平均とファンダメンタルズに基づく日経平均の妥当な水準を示す理論株価、および日経平均の通常の変動範囲と変動の下限を昨年8月1日から直近の8月26日まで1年間の動きを示したグラフです。

日経平均、理論株価と通常変動の上側と下側、および変動の下限の推移 ─2018.8.1~2019.8.26─

日経平均、理論株価と通常変動の上側と下側、および変動の下限の推移 ─2018.8.1~2019.8.26─

紺色の線が日経平均、青線が理論株価、緑線が日経平均の通常変動の上側と下側、赤線が変動の下限を示します。各指標名の枠内の値は直近の8月26日の値です。併せて、この間の日経平均の高値である2万4,270円(2018年10月2日)と底値である1万9,155円(2018年12月25日)の位置を記しています。高値から底値まで3カ月足らずで5,000円余り、21%の急落です。

この急落は米中間の貿易摩擦の激化による世界的な景気後退懸念を主因とするものでした。日経平均は底値では変動の下限を大幅に下回り、ファンダメンタルズに対しての下げ過ぎ状態をさらに下回ったということで、直後にその是正として急反発しましたが、その後の回復力は弱く通常変動の下側まで戻すのが精いっぱいといった状勢です。そして、8月に入ると前述の各リスク要因の顕在化によって通常変動の下側も下離れ、足元の日経平均は変動の下限、下げ過ぎの水準に接近しています。

株式相場がファンダメンタルズに比べ下げ過ぎとなる状態は、投資家が一斉にリスク回避に走る結果ということで「リスクオフ」といわれますが、当サイトではこのリスクオフの状況を数値的に示す指標として「リスク回避指数」を開発しています。

下のグラフは上図と同期間についてのリスク回避指数の推移を示します。

「リスク回避指数」の推移 ─2018.8.1~2019.8.26─

「リスク回避指数」の推移 ─2018.8.1~2019.8.26─

この指数はリスクが高くも低くもない中立の状態を50点とし、40点から60点の範囲を通常のリスク変動の範囲、70点以上をリスクオフの領域とします。さらに80点を超える場合は特別なリスクオフの状況ということで“極端なリスクオフ領域”と称しています。

市場リスクは昨年10月の高値時に通常変動の下側、すなわち投資家がこぞって楽観的になってリスクを選好するリスクオンに向かう予備段階の領域に近付きましたが、その後急激に上昇して12月の2万円割れの底値では上述の極端なリスクオフの領域に入っています。ちなみに極端なリスクオフの領域に入るのはリーマン・ショック以来初めてとなります。その後緩やかにリスクは低下、3月から5月にかけて一時通常変動領域に戻りましたが再び上昇し近時はリスクオフの境界を行き来する状態が続いています。直近の8月26日の値は70.54でリスクオフに足がかかった状況です。

図に見るように市場リスクは高原状態が続いているものの、一方的に上方に突き抜ける事態には至っていません。これは堅調な業績がリスク上昇の足を押さえる役目を果たしていることによります。

下図は市場の業績動向を示す日経平均ベースの1株当たり予想利益(予想EPS)ともう一つのファンダメンタルズ要素である米ドルレートの推移を示したグラフです。

予想EPSと米ドルレートの推移 ─2018.8.1~2019.8.26─

予想EPSと米ドルレートの推移 ─2018.8.1~2019.8.26─

予想EPSは赤線で左目盛、米ドルレートは紺色の線、右目盛りで示します。それぞれの指標について期初の2018年8月1日と直近の2019年8月26日の値を記しています。

この間に米ドルは111円台から105円台まで5.9%低下しており、予想EPSは200円台から215円台まで7.6%上昇しています。為替市場は不穏な情勢が続いていますが堅調な業績が市場の不安を一定の範囲に抑えるイカリの役目を果たしていることが推察されます。

逆に言うと、今後、業績に陰りが見えた場合は市場リスク上昇の歯止め役がなくなり、市場はリスクオフ領域に向かって一気に走る、すなわち相場は下げ過ぎの水準まで急落する可能性があることになります。

今後とも上述の4つのリスク要因は続くと見られる中、業績の動向を注視すべき状況が続きそうです。

(※ご注意:投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません)

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image by : Andrey_Popov / Shutterstock.com

投資の視点』(2019年8月28日号)より一部抜粋

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