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なぜバフェットは成長したアップルを買った? 投資家が参考にすべき「身の丈予測」の極意=俣野成敏

なぜ今になってアップルに投資した?

通常、投資先を探す時は、最初に「これから伸びる産業はどこだろう?」と考える人が多いでしょう。最近だと、IOT(モノのインターネット)や電気自動車、シェアリングエコノミーなどが、よく取り沙汰されています。

一方、バフェット氏はどちらかというと、先進的な産業を敬遠します。かつて、氏の慎重な姿勢が裏目に出て、ITの分野で遅れをとったことは、当メルマガのバックナンバー Vol.138の中でお伝えした通りです。

そのバフェット氏も、今では代表的なIT企業であるアップルに投資を行っています。それはおそらく、氏にとってアップルが安定的に成長し続ける企業として映るようになったからなのでしょう。

個別企業のビジネスを理解できること」が、氏の重要な指標となっていることは、よく知られた話です。

アップルの大躍進を予想できた人

ところで、アップルの現在の躍進のもととなったのが、2007年に発売したiPhoneです。同機が携帯端末に革命を起こしたことは、ご存じの通りです。

世間を驚かせたiPhoneですが、「同機の発売前に、本当にこの変化を予測できた人はいなかったのか?」というと、おそらくいたはずです。それを証拠に、iPhoneに搭載されている機能は、世の中にすでにあった技術を応用したものでした。

どういうことなのか、別の事例でお話ししましょう。私の著書『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』は、仮想通貨のスペシャリストである坪井健氏との共著です。

坪井氏は、もともと暗号化技術のスペシャリストで、同じく暗号技術の粋を集めてつくられた仮想通貨に造詣の深い方です。坪井氏は、暗号通貨に携わる前は、たとえば人工衛星が送ってきた画像データを解析・加工する、といった仕事をしていました。

その氏が2011年頃に、知人を介して初めてビットコインに触れた時、「やはり、こういうものが出てきたか」と思ったのだそうです。

実のところ、ビットコインが出てくる前から、電子通貨という概念はすでにありました。ただ、いくらでも複製できる電子データを、「これがオリジナルである」と証明できる技術が確立していなかっただけのことです。

この事例は、あたかも凄い技術が突然、降って湧いたかのように、素人には感じられても、同じ分野で開発・競争をしている人にとっては、実はそれが“既定路線”であったことを示しています。

バフェットは自分が理解できないものには投資しない

要は、自分がよく知らない分野で他人と競争をしたところで、その分野を本業にしている人には敵わない、ということです。

その技術が本当に将来、モノになりそうなのか?ということや、その技術をどの企業が実現できるのか?ということを、部外者が予測するのは困難です。

これが、バフェット氏が「理解できるものにしか投資をしない」理由なのです。

30年後、50年後も成長を続ける企業を探している」という名言にあるような、「30年、50年先」というと、人は革新的な未来を想像するかもしれません。しかし、そのような中にあっても、今の自分の生活と変わらないこともたくさんあるはずです。

バフェット氏は、「今ある中から30年、50年後も続いているものを想像しなさい」と言っているのであって、すごい未来を予想しなさい、とは言っていません。

実際、投資は自分のわかる範囲内で予測をすれば十分だということを、氏の投資が証明していると言えるのではないでしょうか。

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