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初値はプラス52%、医療ケア事業を行うアンビスHDのさらなる成長に必要なものとは?

思考実験──片づけるべき用事とは

『ジョブ理論』によれば、以下の問いに答えることで用事をより具体化できるようになる、としています。

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。

2.苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしているときか。

3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。

4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。ジョブを完全には片づけてくれない商品やサービスに頼っていないか。複数の商品を継ぎはぎして一時しのぎの解決策をつくっていないか。

5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

出典:『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(第2章 プロダクトではなく、プログレス)

用事の特定

イノベーションを起こすための最初のステップは、ある状況下で顧客がなし遂げようとしている進歩を特定することです。そして、その進歩には機能的、感情的、社会的側面があり、どれが重視されるかは文脈によって異なってきます。また、用事を特定することにより、真の競合相手もみえてきます。では、同社の場合はどうなるのでしょうか。

今回は、同社グループが課題としてあげる「在宅療養に携わる看護人材の確保」を取り上げます。同社グループはそれを、次のように認識しています。

医療や介護など健康福祉に関する業界は、もともと慢性的な人材不足の不安が存在しておりますが、2025年問題(団塊世代のすべてが後期高齢者となり、医療や介護の過剰な需要を生じ、社会保障費の急増が懸念されている問題)に向かって人材不足の不安がより深刻な状況となります。さらに在宅療養に携わる看護人材を確保することの難しさを説明するには及びません。当社グループが医心館とその先にある事業に取り組み、持続的な成長と発展を遂げるためには人材確保と育成が課題となります。また、今後は人材を確保するにあたり必要となる採用フィーが高騰する恐れがあり、この低減に努める必要があると考えております。当社グループでは、このような課題を認識しておりますが、既に前項(潜在ナース活用事業への取組)の対応をはじめており、今後の状況次第では同業他社に対する競争優位性を築くチャンスになり得るものと考えております。

顧客がなし遂げようとする進歩の機能的側面は「安心な住まいのなかで看護を受ける」ということ。感情的側面として「不安の軽減」「癒し」、社会的側面として「つながりの提供」といったことを重視するでしょう。

なお、同社グループは、競合の出現を次のように認識しています。

当社グループが行っている「医心館事業」では、一般的な介護施設では受け入れることが困難な、がんの末期状態にある方、特定疾患等の難治性の病を患う方、人工呼吸器の装着や気管切開で呼吸管理が必要な方、看取り対応の方、入退院を繰り返さざるを得ない方、重度障害により「在宅」での日常生活が困難な方など、いずれも医療依存度が高く「在宅」で看護・介護を十分に得ることが難しい方々をその利用対象者層とし、ここに他社との差別化要因のひとつを求めております。

利用対象者層の限定を含め、事業スキーム(モデル)そのものには特許等は存在せず、他社からの模倣に対して権利関係での保護策を講じることは困難であり、当該事業と同様のサービス提供を行う事業者が出現するリスクがあります(差別化戦略に対する同質化戦略による応酬)。

しかしながら、表面化していない事柄(例えば、医療機関や行政機関の当社に対する「共感」、展開先各地の医療/介護ニーズに合わせて臨機応変に運営するノウハウ、看護職員の採用力など)があることから、競合他社が当社のビジネスモデルの仕組みだけを模倣したところで当社と同様の業績を得ることは困難であると認識しております。

Next: アンビスホールディングスがすべきは、看護師の離職率を下げるための施策

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