昨年話題となった、大株主のヤフーとプラスが定時株主総会で取締役選任疑義案を否決さしたアスクルの事案について改めてまとめた。その後のアスクルは…?(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)
アスクルの大株主による取締役選任議案の否決
大株主のヤフーとプラスに対して挑戦的な内容を発表
本年度の株主総会における取締役選任議案が否決された事例として、記憶に新しいのが、2019年8月2日開催のアスクル<2678>事案。
<1.取締役選任議案(第2号案件)否決(8月2日)>
※参考:代表取締役の異動ならびに取締役、監査役の選任に関するお知らせ‐アスクル株式会社
(1)代表取締役
岩田彰一郎社長/CEO ⇒ 退任
※同日の取締役会で、吉岡晃取締役が新社長/CEOに就任(←取締役 BtoCカンパニー最高執行責任者(COO))
(2)社外取締役
戸田 一雄・宮田 秀明・斉
藤惇 ⇒ 退任
以下は、8月2日以降においても大株主ヤフーに対して複数の挑戦的な内容。
<2.総会第2号案件(上記1)に係る賛成割合のお知らせ(8月5日)>
※参考:第56回定時株主総会第2号議案に係る議決権行使の賛成割合のお知らせ‐アスクル株式会社
<ヤフー/プラス(共同保有者分を含む)の議決権行使を除いた賛成割合>
岩田彰一郎 75.7%
戸田一雄 95.6%
宮田秀明 94.7%
斉藤惇 93.2%
特に独立社外取締役候補であった戸田氏、宮田氏、斉藤氏の賛成割合はいずれも9割を超えており、少数株主から圧倒的な支持を得ていたことが判明。
この結果から、今回のヤフー・プラスの行った一連の行為は、少数株主の意思と合致しているものとは到底言えず、当社は改めて遺憾であることを表明する。
<3.支配株主等に関する事項について(8月20日)>
<会社側の認識>
(1)ヤフーは議決権の45.1%を所有するが、同社からの制約なく、当社の独立性は確保されていると認識
(2)独立社外取締役不在に対して、大いなる憂慮すべき事態と認識
<4.(暫定)指名・報酬委員会の設置および同委員の選定について(9月12日)>
※参考:(暫定)指名・報酬委員会の設置および同委員の選任について‐アスクル株式会社
当社の独立社外取締役には、経営陣のみならず支配的株主(ヤフー社/プラス社)からの独立性が強く求められること、また、透明性、公平性、客観性を担保して独立社外取締役選任のプロセスを進めることが必須であることを考慮し、本日開催の取締役会において、独立社外取締役不在の状況下における次善の策として、暫定的に顧問弁護士(2名)※、独立社外監査役(2名)および当社代表取締役社長を委員とする指名・報酬委員会を設置することを決定し、あわせて以下のとおり5名の指名・報酬委員を選任した。
※新たに本日付けで顧問契約を締結。両氏は過去において当社の顧問弁護士を含め契約関係にあったことはなく、一切の利害関係はない。
<感想>
本件は、アスクルの定時株主総会で大株主(ヤフー/プラス)が取締役の選任を否決した事例。
それ以降も会社側のスタンスは一向に変わらないように見える。何とも不思議な会社である。
image by : 編集部
『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2020年1月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による