fbpx

新規上場した名南M&Aのさらなる成長は、直接相談件数をいかに増加させるかが重要に

体験の構築

用事が特定できたら、次になすべきことは、顧客がなし遂げようとしている進歩に伴う体験を構築することです。製品・サービスの購入時や使用時におけるすぐれた体験が、顧客がどの製品やサービスを選ぶかの基準になるからです。では、同社はどのような体験を構築すればいいのでしょうか。

マッチングサイトを雇うとする売り手にとって障害となり得るのは、いつ買い手が見つかるか分からないこと。いうなれば、運任せという面があることです。その点、同社が行おうとしている直接アプローチは差別化の要因となり得ます。したがって、この優位性をうまく生かせば、直接相談案件の獲得を増やすことができるでしょう。

プロセスの統合

最後は、顧客がなし遂げようとしている進歩のまわりに社内プロセスを統合し、顧客に対して彼らが求める体験を提供します。そうすることにより、プロセスは摸倣が困難になり競争優位をもたらすのです。

ジャン・ティロールは、同社のような2面プラットフォームに特徴的な戦略として「売り手を競争させること」「場合によっては価格統制を行うこと」「品質管理を徹底すること」「情報の提供」を指摘しています。では、これらの戦略で直接相談案件の獲得を増やすにはどうすればいいのでしょうか。

たとえば、ある業種・業態の企業の買収を検討している買い手に直接アプローチしたうえで、それと同じ業種・業態の売り手企業を競争させるのもいいでしょう。売り手にしてみれば、買い手の目星がついているのであれば、同社に直接相談してみようという気にもなるというものです。もちろん、買い手には売り手に関する情報の提供は必要です。なお、業績の評価基準は当然のことながらリトル・ハイア「直接相談案件の数」ということになります。

【参考文献】

・クレイトン・M・クリステンセン他[著]、依田光江[訳]『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
・クレイトン M.クリステンセン『C.クリステンセン経営論』(ダイヤモンド社)
・クレイトン・M・クリステンセン『医療イノベーションの本質─破壊的創造の処方箋』(碩学舎ビジネス双書)
・ジャン・ティロール/著、村井章子/訳『良き社会のための経済学』(日本経済新聞出版社)
後継者不在の名店 外食大手、M&Aで守る‐日本経済新聞社(2019年10月7日公開)
(けいざい+)後継者がいない3:3 「M&Aは縁」、迷い振り切った‐朝日新聞デジタル(2019年5月30日公開)
その会社 買っても大丈夫?‐NHK NEWS WEB(2019年6月7日公開)
・有価証券届出書(新規公開時)


本記事は『イノベーションの理論でみる業界の変化』2020年1月15日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

image by:Billion Photos / Shutterstock.com

【関連】新規上場したトゥエンティーフォーセブンは、新鮮な体験ができるジムへ転換できるか

【関連】あれからアスクルに変化はあったのか?大株主からの取締役選任否決に対抗した事例

【関連】トヨタ自動車の株価は昨年2割上昇、それでも日経平均のPERを下回るのはなぜか?=柴山政行

1 2 3

イノベーションの理論でみる業界の変化』(2020年1月15日号)より一部抜粋

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

イノベーションの理論でみる業界の変化

[月額880円(税込) 毎週 月曜日(年末年始を除く)予定]
クリステンセン教授たちが練り上げた「片づけるべき用事」の理論は、これまで不可能とされてきたイノベーションの予測を可能にし、その効果はアマゾンのベゾスらによっても確認されているといいます。3年目になる2018年からは内容を刷新し、従来のMBAツールとは一線を画すこの優れた理論を使い、各業界におけるイノベーションの可能性を探ります。これはイノベーションを生み出すための「思考実験」にもなります。なお各号はそれぞれ単独で完結(モジュール化)しているので、関心がある業界(企業)を取り上げた号を購読していただけます。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー