ゴールド生産量が減っています。多くの人が無視してきた「ゴールド・ピーク説」も、ついに現実味を帯びてきました。希少性と価格がますます上がります。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)
※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2020年2月13日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ゴールド生産量はどんどん減っていく
多くの人が無視してきた「ゴールド・ピーク説」ですが、とうとう、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)というお抱え組織でも無視できなくなったようです。海外の報道の翻訳しながら、ポイントを解説します。
2019年、鉱山からの新産金量は1%ほど減少した。これによって、どうも長期傾向として、今後も新産金量は減ることが確定的になった。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の集計によると、2019年の新産金量は3464.7トンであった。
特に、第4四半期の生産量が前年同期比で2%減少して、859.5トンだったことが影響した。
また、2019年の毎四半期の生産量は、ことごとく前年対比で減少した。
出典:Gold Mine Output Falls for First Time Since 2008 – SchiffGold.com(2020年1月30日配信)
歴史的に見ると、1970代以降、ずっと金生産量は増加してきた。
確かに一時、2008年に少し減産となったが、それは一時的な変動であって、傾向と言えるものではなかった。ここ数年で言えば、2015年から2018年の間は、多少の変動はあるが、増産してきたのだ。
しかし、2019年の落ち込みは、ゴールド・ピーク説を裏付けるものだろう。
出典:同上
もう採掘し尽くした?
現在、アナリストだけではなく、複数の金鉱山会社のトップが此のゴールド・ピーク説を唱えている。例えば、Goldcorpの会長や、WGC議長、Franco-Nevada社の会長も、同じような主張をしているのだ。
背景として、南アフリカは昔は産金国第1位の国だったが、今や第9位で、2018年の分析研究では、現在の採掘レベルで行くと今後40年で残存可採埋蔵量はゼロになるとのことである。
現在の産金国第1位は中国だが、2019年の産金量は前年対比で6%減っており、これは3年連続の減少だ。
リサイクル回収を含む世界産金量総計では、金価格上昇でリサイクル回収が増加したために、2019年は2%増加している。
これの一因は、第4四半期のリサイクル量が16%増加して335トンになったことである。これにより、2019年通年のリサイクル回収量は合計で1,304.1トンとなり、2012年以降で最高記録となった。
しかし、リサイクル回収が今後も長期的に増えるとは考えられない。
出典:同上
大きな問題は、採掘しやすい鉱脈はほとんど採掘し尽くしたことである。
過去30年間、探査開発の為の投資額を増やしているにも拘わらず、新たな金鉱脈が中々見つからないこと。そして、採算が取れるような大規模金鉱脈がもう存在しないこと。さらに、生産量に見合うだけの新たな鉱脈を発見できていないことだ。
金価格が上昇しても、採掘コストの上昇、含有する金鉱石品位が落ちていることで、金採掘企業は現在も苦しんでいる。
南アフリカのSibanye Stillwater社の副社長は、「採掘コストの半分は人件費。20%は電気代なので、これらのコスト上昇に苦しめられている」とその悩みを語った。
出典:同上
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