「不本意フリーランス」が続出する?
事業主が高齢者を雇用する際には「雇用もしくは就業」としています。
これは「雇用」だと労働契約がありますが、「就業」だと委託契約でも良いわけで、つまり労働法も中に労働契約から委託契約に切り替えられる仕組みがついているということになります。
この「就業確保措置」のなかにある「雇用もしくや就業」という文言は、いつでも労働法による保護からはずすフリーランスの身分にすることができるということです。
この選択肢は事業主側にあり、働く意思がある高齢者は、これを拒めない状況にあります。
年金支給額の減額、支給開始年齢が、現在の65歳から70歳になるのではとも言われています。
60歳以降も、70歳までは働かなければならないと思っている高齢者は、大勢いると思われます。
フリーランスの処遇であろうが、働けるのであれば、事業主に言われるがままの処遇で働くしかないという状況になるのではないかということが懸念される法案になっています。
伊藤氏は、この状況を「不本意フリーランス」と呼んでいます。
高年齢雇用継続給付も縮小へ
さらに今回の法律改正で、別の問題も指摘されています。
定年まで5年以上継続して雇用保険に加入し、60歳以降の賃金(給与)が60歳時点の賃金の75%未満になる場合は、雇用保険制度から高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)が支給されることになり、低下した賃金の一部が補填されることになります。
これは雇用保険制度の範疇になるのですが、今回この制度も改正され、65歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて、高年齢雇用継続給付を2025年から縮小するとともに、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を、雇用安定事業に位置付けるとしています。
2030年には、男女ともに年金受給開始年齢が65歳になるので、65歳まで雇用されることにおける賃金体系を整えるので、再雇用における高年齢雇用継続給付を廃止していこうというものです。
雇用保険会計には疑問があり、今回の新型コロナウイルス感染拡大により、今後は失業保険給付金はすごく増えることが予想されます。
いまでも失業給付金は下がっていて、日額8,330円では生活は厳しいでしょう。
おそらくこれらのこととセットで、副業・兼業容認ということがあるように思えます。
副業関連を含む「束ね法案」成立へ着々と進んでいる
副業に関しては、現行制度では雇用保険の考え方は、勤務先ごとの労働時間で判断しており、多様な働き方が広がる現状に対応できていないとされています。
新制度が導入されれば掛け持ちで働く人も労災認定されやすくなり、労働者保護が広がるとしています。
新制度では、複数の勤務先での負荷を総合的に評価して労災認定します。過労死を招く脳・心臓疾患は発症1ヶ月前の残業が100時間を超えることが認定の目安ですが、1つの勤務先では100時間未満でも、複数を合算して100時間を超えていれば認定されることになります。
また現在、労災保険の給付額は労災が起きた勤務先の賃金のみが根拠となっていますが、新制度では、労災が発生していない勤務先の賃金も算入することができるようになります。
これらの法律も「束ね法案」になっていて、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」と「等」が付いていて、他に、前述の高年齢者雇用安定法に加え、労災補償保険法、労働保険料徴収法、労働施策総合推進法など、細かい法律も含めると20本ぐらいを束ねている一括法案になっているのです。