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中国、コロナ克服の嘘。世界の常識から外れた習近平を襲う2つの危機と倒産ラッシュ=勝又壽良

中国の抱える2つの難点

中国も、米国並みに経済活動が緩やかな回復ペースで進むとなれば、中国固有の事情によって、中国経済が大きなダメージを受けることは必至である。

具体的には、次の2点である。

1)不動産バブルに伴う巨額債務が、国内経済に与える重圧である。習近平氏は政権について以来、意識的に不動産価格を押し上げる政策を取ってきた。不動産バブルの慢性化を図り、これをテコに家電製品や乗用車の販売を引上げる政策を取ったのだ。この点では、胡錦濤政権の不動産バブル退治を基本とする抑制型政策とは、180度も異なる異端の政策を推進した。

習近平氏は、土地国有化を逆手に取って、「土地本位制」で中国のGDPを押し上げたのだ。世界の歴史において、土地値上りを「価値標準」にした国はない。英国が、イングランド銀行を中央銀行に昇格させる際、通貨発行の基準を何にするか議論した。その際、土地が候補になったが退けられ、商業手形が通貨発行の裏付けになった経緯がある。これが、インフレを抑制するからだ。

中国は、土地国有化を悪用したバブルによって通貨発行を支える、異常な行動に出たのである。地方財政は、土地売却益(土地利用権売却益)が全体の4割程度を占めるという、「土地本位制」に依存した。中央政府は、表面上の財政赤字を圧縮し、地方政府に全てのしわ寄せをしてきたのだ。この矛楯が、これから表面化する。土地値上りを「打ち出の小槌」に使い、GDPを無理矢理に押し上げ、過剰債務の山を築いてきた「咎め」が、中国経済を窮地に追い込むであろう。

2)IMFが予告するように、世界経済はこれからマイナス成長に向かう。その際、発展途上国の経済が、大きなダメージを受けることは不可避となった。2008年のリーマンショック以来、世界的な低金利によって債務はうなぎ登りの増加となった。その多くは、発展途上国が借入れたものである。

その貸手の中心が中国である。「一帯一路」は、中国がアジア・アラブ・アフリカの盟主を狙って、積極的に貸付けた結果である。だが、中国は貸付国の条件として、金利などについて秘密にする契約を結んでいる。IMFといえども、その貸付条件(商業銀行並みの高金利)を把握できないという秘密性に包まれている。詳細は、後で取り上げる。

脆弱性直撃のコロナ恐慌

以上の2点において、今後の世界経済が大恐慌以来の落ち込みとなれば、中国経済は耐えきれないことを示唆している。

第1の不動産バブルによる過剰債務は、平成の日本バブルを上回っている点である。

<日本の民間部門債務残高対GDP比率>

1990年:211.20%(生産年齢人口比率ピーク バブル崩壊)
1995年:216.30
2000年:190.60
2005年:164.70
2010年:163.90
2015年:153.80
2016年:156.50
2017年:157.40
2018年:160.70

<中国の民間部門債務残高対GDP比率>

2010年:149.50%(生産年齢人口比率ピーク)
2011年:149.20
2012年:162.00
2013年:175.70
2014年:187.90
2015年:197.60
2016年:205.40
2017年:207.30
2018年:204.80
(資料:BIS)

上記の、日中における民間部門債務残高対GDP比率を見ると、2018の中国は204.80%である。日本の1990年211.20%を若干、下回っている。しかし、ここから中国の難儀が始まることに注意しなければならない。

日本は、バブル崩壊後の1995年に債務残高比率が216.30%へ増えている。これは、GDPの急減速で企業の売上が落込み、債務返済ができず銀行から「追い貸し」を受け、資金繰りをつけて倒産を免れた、生々しい苦闘の跡である。

日本の経験が、これから中国に起こる点に注意することだ。現に、この3月の借入は記録的な増加になった。コロナ禍で経済活動ができず「繋ぎ融資」を受けた証明である。設備投資などの前向き資金ではない。企業が、売上ゼロによる生き延びのために必要不可欠な資金である。日本企業が、1995年に債務残高比率216%へ膨らんだことと同じ事情である。

今年3月の新規人民元建て融資は、2兆8500億元(4052億ドル)。2月より3.15倍も膨らんだ。前年比でも1.68倍である。3月末時点の人民元建て融資残高は前年比12.7%増である。これらの数字は、すべて「延命」融資であって、何らの付加価値も生んでいない事実に留意すべきだ。中国は、自ら新型コロナウイルスを拡散した結果、自国企業の延命でこれだけ多額の資金供給をしたのである。高額な「賠償」と言うほかない。

この増えた債務残高は、中国企業が返済しなければならない「ツケ」である。日本の平成バブル崩壊以上の経済減速に伴う負担が、これからの中国企業にかかっていくのだ。

この現実をしかと見るべきだろう。中国企業が、持ち堪えられるはずがない。倒産ラッシュが、すでに始まっているからだ。

Next: 第2の発展途上国債務問題は、中国政府に新たな負担としてのしかかってくる――

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