Amazonの売上に対する配送費の割合を見ると、2010年以降に大きく上昇させています。決算書ほか各種データを元に考察することで、同社の事業戦略に迫ります。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
(筆者注:この記事はゲストライターとの共同制作です。)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2020年6月2日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
Amazon「配送費」の推移
今回の記事では、皆さんご存知のAmazonの「配送」に着目していきたいと思います。
ECサービスにおいて、配送は非常に重要なファクターです。コスト構造においても大きな変数となりますし、顧客体験の差別化ポイントともなるためです。
今回は、そのような重要な要素である「配送」に関して、Amazonの直近20年間の決算書を元に、紐解いていきたいと思います。
まずは、2000年~2019年のAmazonの配送費(Shipping Costs)の推移を見てみましょう。
なお、Amazonの配送費には、純粋に配送にかかるコストの他に、デリバリーセンター等の設備構築費、センター内の人件費も含まれています。
今回は、Amazonが毎年発表しているAnnual Reportから、数字を抜粋してグラフ化しています。
このように、指数関数的に右肩上がりで伸びていることが分かります。
2019年には$37.9B(約3.79兆円)に達しており、直近の20年間で約112倍の規模に膨らんでいる計算になります。
ただ、Amazonの売上が伸びているのであれば、それだけ配送費が膨らむことは当然といえば当然の話です。
そこで、次にAmazonの「AWSを除く売上に対する配送費の割合」を見ることで、売上に対して配送費がどのような増減をしているのか、確認していきましょう。
「売上に対する配送費の割合」の推移は?
直近20年間の「売上に対する配送費の割合」を図示すると、以下のようになります。
図を見ると、2000年から2009年までは下降トレンドですが、2009年を底値として、2010年以降は、上昇トレンドに転じており、綺麗な「V字型」となっています。
2009年までの動きに関しては、 USPS / FedEX / UPSを中心とした各宅配会社との交渉等により、配送コストの効率化を推進した結果が出ている、と理解することができます。
Next: ただ、2010年以降に上昇に転じた理由は、どこにあるのでしょうか?――