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東京五輪特需はすでに完全終焉。開催しても経済浮上せず、中止でも関連企業が損するだけ=今市太郎

そもそ開催年に経済的効果ピークという考え方が間違っている

もともと2017年に東京都が策定したデータによれば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関連する経済効果は、オリンピック招致が決まった2013年から大会終了後の2030年までの18年間で32兆円とされてきました。そのうち大会実施までが21兆円、大会終了後から30年までが11兆円。経済効果の振り分けとしては、その6割が東京で、残り4割がその他の地方都市とされています。

ロンドン五輪やワールドカップの日韓開催などの事例を見ても、実は五輪開催年はどこの国でも宿泊施設がブッキングできないなどから、前年よりも外国人の来訪客が減少しているのが実態です。

たしかに開催期間の2週間強はそれなりの消費が見込まれるのでしょうが、事前の経済効果のほとんどは昨年までに消化されている必要があることがわかります。国内シンクタンクの試算では「完全中止なら3兆円強の損失」という数字が出ていますが、これまでに18兆円を稼げているのであれば大した数字ではないのでは?という気もしてくるわけです。

新スタジアムの建設、選手村の建設など施設に対する直接的な投資額は5,000億円程度ですが、日銀が2015年にまとめたペーパーによれば、建設関連費の総額を含めればほぼ10兆円の効果はすでに刈り取られたことになるわけです。

しかし、昨年までにそんなに大きな経済効果は感じられたでしょうか?

そもそも五輪の経済効果のうちのほとんどは開催年度以前に完全に示現しているべきものですから、ここで延期しても、中止に追い込まれたとしても、すでにかなりの経済効果は享受できていなくてはならないことになります。

ですが、この数年で五輪開催がそんなに景気を押し上げたという印象はまったくありません。

内閣府がいじくりまわす捏造風味満載の経済指標でも、そんな大きな効果があったことはまったく確認されていないのが実情です。

また、レガシー経済効果という五輪実施後の効果については、金融の世界では未実現益の世界の話で「取れたらいいね」という程度で、本当に効果として示現するかどうかはまったくわからないことがまことしやかに語られているだけに過ぎません。

たとえば、8年前の他国のオリンピック、4年前のオリンピックの開催地を見ても、「レガシー効果」などという後年度経済効果が発生しているなどとはまったく言えないのが現実です。

4年前の開催地であるブラジル・リオデジャネイロは、新型コロナ感染者爆発で五輪の後年度効果どころではないのが実情でしょう。

猛烈に速いスピードで日々動いている世界経済の中で、レガシー効果などという荒唐無稽でおめでたい話に11兆円の効果を期待するのも、相当な違和感を感じさせられます。

損失はもっぱら日本勢だけか?

この東京五輪1年延期で、6,000億円超えの損失金額が算定されはじめています。

延期の問題が浮上したとき、もっとも影響を受けるのは「米国」とされてきました。さらに言えば、五輪の放送権料を日本円にして11兆円支払い、すでに12億5,000万ドル以上の広告枠を販売してしまった米NBC局であるとされてきました。

しかし、よくよく調べてみると、リスク管理についてはぬかりがない様子。実は過去の苦い経験からしっかり保険に加入しており、延期しても中止でも儲からないだけで、莫大な損失は生じない手立てがすでに履行済みのようです。

むしろ問題は、国内でスポンサーを集めて番組を販売し、協賛各社のキャンペーンにそれを利用しようとしている電通とテレビなどのメディア、ならびに協賛したスポンサー企業で、ここからの損失は民間企業としてのリスクヘッジマネジメントの問題に入ってくるものと思われます。

Next: しかし、これで損失が出たとしても関与した各企業に問題があるだけで――

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