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最悪の2020年、次に起きる大事件とは?米抗議デモを的中させた専門家の警告=高島康司

格差の固定と現代アメリカの不安定

これとほぼ同じような要因の組み合わせが、やはりアメリカの社会的不安定性の50年サイクルにも当てはまるとターチンは主張する。

人口数と高学歴者の数が増加していても、高い経済成長が続き、生活水準の上昇、ならびに高学歴者の雇用数が増大している限り、社会は安定しており、社会的な騒乱はめったに発生しない。どんな人間でも努力さえすれば、社会階層の上昇が期待できる状況である。

しかし反対に、格差が固定化して、政治や経済のシステムが一部の特権階級に独占された状況では、たとえ経済が成長していたとしても、社会階層の上昇は保証されない。格差とともに社会階層は固定化される。すると、たとえ高等教育を受けていたとしても、期待した仕事は得られないことになる。

このような状況が臨界点に達すると、社会的な暴力は爆発し、多くの騒乱や内乱が発生するというのだ。

新しい記事でも予測

そして、今回の新型コロナウイルスのパンデミックが発生した後に書かれた論文、「コロナウイルスの長期的な影響」では、社会不安が爆発する危険性はさらに高まったとして、次のように書いている。
※参考:Long-Term Consequences of Coronavirus – Peter Turchin(2020年4月20日配信)

「合衆国に関する国内対立の私の予測はどちらかというと暗い。アメリカの政治エリートは自己中心的で、分断していて、いつも内輪もめが絶えない。だから私は、これから膨大な数のアメリカ国民は、それこそ、底が抜けてしまったかのような状態に陥るはずだ。

一方、政府財政は破綻の危機に直面しつつ、支援は大企業に限定されるだろう。その結果、格差のさらなる拡大と政権への国民の信頼感の完全な低下、そして社会不安の激増、エリートの間の激しい闘争が起こる。そして、私が予測のために使っている構造的な人口モデルのあらゆる負の側面が、アメリカで爆発するだろう。私はこの否定的な予測が間違っていることを心から望む」。

ターチンは歴史学者なので大袈裟な表現はしない。この論文の表現も比較的に抑制的だ。だが、「私が予測のために使っている構造的な人口モデルのあらゆる負の側面が、アメリカで爆発する」とは、要するに内乱の発生の警告である。

ターチンが2010年に最初に予測したことが、まさに目の前で起こりつつあるのではないか?

最新記事「2020」

さらに、このような全米規模の抗議デモの拡大が止まらなくなったいま、ターチンは新しい記事を6月1日に自身のサイトで発表した。それは「2020」という刺激的な題名の記事だった。その記事でターチンは次のように言う。
※参考:the_2020 – Peter Turchin(2020年6月1日配信)

「2010年に私が2020年頃にアメリカ国内で内乱が発生すると予測したのは、当時の政治情勢の分析に基づくものではまったくなかった。どの社会にも社会の回復力を損なう不安定要因が存在する。それらは、1)貧困と格差、2)エリートの権力闘争、3)政府機関の機能不全の3つである。これらの変数を数値化し、私は「政治ストレスインデックス(PSI)」という指標を作った。

2010年当時、この「PSI」がアメリカとヨーロッパでは急速に上昇しており、2020年には危険な状態になることを示していた。それが予測の根拠であった。

動画で公開されたジョージ・フロイド氏の殺害の場面は大変にショッキングで、激しい怒りが込み上げてくる。これは当たり前の感情だ。警察のこの行動に怒らないものはいない。この事件は、抑圧された社会的ストレスが爆発する噴火口になったのだ。

2020年になったいまでも「PSI」は上昇するばかりだ。下がる気配はまったくない。新型コロナウイルスのパンデミックは、この上昇をさらに加速させている。ということは、ジョージ・フロイド氏への怒りがきっかけで始まった今回の抗議デモが、たとえ収まったとしても、新たな出来事が契機となり、社会不安は一層激しくなることが予想される」。

以上である。

ターチンは「PSI」は西欧でも上昇しており、アメリカと同じく西欧も激動の時期に入ったので、今後アメリカと同じような状況になるだろうともしている。

Next: さらにターチンだけではない。2020年代と特定されているわけではないが――

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