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飲食店は耐えるより閉店すべき。決断が遅れると完膚なきまでに叩き潰される=鈴木傾城

粘るよりも店を畳んだ方が傷が浅い

とすれば、合理的に考えると、コロナの直撃を受けて今の状況で利益を出せない飲食店は「粘るよりも店を畳んだ方が傷が浅い」ということになる。

飲食店は浮き沈みが激しい業界だが、コロナ時代は沈む方が大きく深いのだから、もし今の時点で資金的に傷を負っているのであれば、傷を深くする前に撤退する方が借金を増やすよりもずっと良い。

しかし、多くの経営者は「これまで店にかけた時間と金がもったいない」と思う。

この「これまで店にかけた時間と金がもったいない」というのは、実はワナであることは行動経済学でよく議題になる。

辞めたら「もったいない」で損失はさらに膨らむ

「これまで店にかけた時間と金がもったいない」というのは、行動経済学で「サンクコスト」と呼ばれている。埋没費用とも言う。

たとえば、以下のケースを考えて欲しい。

「これまで店に500万円投じた。まだ100万円しか回収できていない。コロナで店をやめたら400万円が赤字になる。しかし、続けたら毎月50万円の赤字が出る」

毎月50万円の赤字が出るのであれば、8月から12月まで250万円の赤字が累積する。400万円が回収できない上に250万円の赤字が積み重なる。そうであれば、400万円の赤字の状態でも撤退した方がいいのではないか。その方が傷が浅い。

合理的に考えればそうだ。しかし、回収できない400万円の赤字が「もったいない」と経営者は誰でも思う。だから、借金が徐々に徐々に膨らんでいっても、この400万円が引っかかってやめられない。

この「もったいない」「回収したい」と思う400万円が、サンクコストだ。コロナによるパンデミックが起きて、何をどうやっても回収できなくなった費用が心理的な「おもり」になって足抜けできなくなるのである。

抱えているサンクコストの額は違っていても、今まさに多くの飲食店経営者がそうした状況に追い込まれているはずだ。コロナによる客の減少で「まずいことになった」と思っても、サンクコストに縛られて身動きできない。

Next: しかし、どのみち2020年中は状況が改善しない確率が高い。政府もアテに――

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