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中国で「無人タクシー」が日常風景へ。なぜ日本の自動運転技術は勝てない?=牧野武文

すでに映画を観ながら運転可能?

また、百度(バイドゥ)は、長沙市・滄州市ですでにロボタクシーの試験営業を昨年9月から始めています。長沙市では45台のロボタクシーを投入するという大掛かりな試験営業で、段階を経て、そのまま正式営業に入ることを前提とした試験です。

当初は、滴滴と同じように長沙市民限定で事前予約してもらうことで乗車できるというやり方でしたが、現在は全面開放され、専用の“dutaxi”というアプリから、誰でも空きがあれば乗ることができるようになっています。先に自動運転の開発を始めていた百度としては、今回の滴滴の上海での試験営業に大きな刺激を受けたことは間違いありません。近々、百度側にも大きな動きか発表があると考えるのが自然です。

このロボタクシーは「L4」自動運転と呼ばれます。

自動運転にはレベル0からレベル5までの区分がされています。

レベル0:すべて人が操作する
レベル1:ペダル操作、ハンドル操作のいずれかを自動化。オートブレーキ、車線維持など
レベル2:ペダル操作、ハンドル操作の両方を自動化。高速道路でのオートクルージングなど
レベル3:一定の条件下ですべての運転を自動化。ただし、システムが状況により、人側に運転操作を戻す。一般には高速道路や郊外バイパスなどでの自動運転
レベル4:一定条件下ですべての運転を自動化。ただし、人が運転に介入できる
レベル5:人が介入しない。完全自動運転

このうち、レベル3以上が「自動運転」と呼ばれます。

このレベルの違いは、運転者の側から見ると、理解しやすくなります。レベル3では、システムがいつ手動運転を要求するかわかりません。運転手はいつでも手動運転ができる状態であることが必須になります。そのため、運転者は、自分が運転するのと同じように状況を把握しなければならず、スマホ操作や映画鑑賞、居眠りはできません。

「あれ?日本では『L3』の自動運転が解禁になり、運転中にスマホを見てもいいと報道されているけど?」と思われた方もいるかもしれません。改正道路交通法で、L3自動運転が認められましたが、自動運転可能な条件は「高速道路で同一車線を時速60km以下の低速走行している」場合です。この場合は、スマホを見たり、テレビを見たりしてもかまいません。しかし、高速道路を60kmで走るというのは、周りの車にすれば迷惑にもなりかねない走行で、あまり現実的ではありません。もちろん、それ以上の速度での自動運転をしてもかまいませんが、その場合は、「運転者が自動運転装置を使って、運転を行っている」扱いになるので、通常の運転と同じようにスマホを見たりすると違反になります。

まずは、リスクの少ないところから、自動運転を解禁していくということなのだと思います。

「無人運転」実現へ王手

レベル4でも運転者は乗車しなければなりません。一定条件下では、運転者は安全監視も操作も必要なく、寝ていてもかまいませんが、条件下を外れると、人が運転しなければならなくなるからです。例えば、一定条件が「高速道路の走行」でしたら、高速道路を降りたら手動運転する必要がありますし、一定条件が「基準を満たした道路の走行」でしたら、生活道路に入る時には手動運転する必要があります。

ただし、このレベル4で、無人運転を実現する方法がないわけではありません。

それはバスなどの固定路線を走る車両です。あらかじめ固定路線の道路環境を整備して、自動運転の条件を外れないようにしてやれば、手動運転の必要がなくなるので、運転者が乗車する必要がなくなります。5G通信を活かして、リモートで走行状況を監視し、緊急時にはリモートによる停止、リモートによる操作を可能にすることで、無人運転を実現しようという試みも行われています。

レベル5では、すべての状況で自動運転となるので、運転者は必要なく、中でスマホを使ったり、眠ったり、好きにすごせることになります。

中国は今、この「L4」自動運転をさまざまな分野で実現しようという段階にきています。

Next: 規制だらけの日本とは真逆。北京、上海、重慶など大都市が導入競争

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