バフェットの目的はリスクヘッジか
バフェットがなぜそんな会社に投資したのでしょうか。
ひとつ考えられるのは、やはりこの新型コロナショックによる動きです。バフェットがこの新型コロナショックで何を懸念していたのかというと、政府による金融緩和の弊害です。
例えば5月に行われた株主総会で、「起こりうるのは通貨への疑念」だということを言っています。新型コロナの対策で政府がバンバン国債を刷っている中で、経済論的に言えばお金をたくさん刷れば刷るほどお金の価値が下がってしまう、つまりインフレになるということが懸念されています。
そういった中でインフレをヘッジしようと思ったら、金などが代表される実物資産、あるいは資源や一般的な商品などもそれに該当すると思いますが、とにかくこの部分を気にしていたということがありました。
そんな中で出てきたのは、この金鉱株への投資です。
バフェットはそれまで金そのものへの投資は金利を生まない以上、株式に対して劣る資産だと言っていました。ただバフェットはその発言を覆して金鉱株、金を掘る会社の株を買いました。もちろん株なのでやがてはそこから配当というのも見込めるので、単純に金への投資ではなくて配当付きの金の権利を買ったということになります。
これによって将来的なインフレが起きた時に、この金を持っていればそのリスクをヘッジできると考えたのではないかと想像できます。
さて、先ほど説明しましたように商社は資源に大きくベットしています。
資源価格というのは当然インフレになれば、それに比例して上昇するということが想定されるので、この資源価格連動の商社株というのはインフレヘッジという意味でも、大きな意味合いを持っているのではないかということが想像できます。
ただしウォーレン・バフェットは今この新型コロナショックを受けて、慌てて動いたというわけでも商社に関してはなさそうです。
この短期間で商社株を買ったわけではなくて、長い期間をかけてどんどん少しずつ買い増していたというのが実情です。
バフェットが本腰を入れた投資ではない
その1年前に何があったのかというと、以下の記事に示されているものです。
※参考:バークシャー、初の円建て債4300億円 海外企業で最大 – 日本経済新聞(2019年9月6日配信)
バークシャー・ハザウェイが初めて円建て債を発行しました。
4,300億円と海外企業で最大という驚きのニュースではありましたけれども、いったい何に使うのかというところが正直この時は見えませんでした。しかし、今になって考えてみると、ここで発行した債券で商社株を買っていたわけです。
ここで4,300億円となっていますが、今は6,300億円くらいになっています。ちょうどこの商社5社に投資した金額が6,300億円ぐらいなので、ぴったりと合います。
なぜこの債券を発行して買ったのかということです。
まあ1つは為替のヘッジ選んで発行していれば、ドル円のレートが動いた時にそこのリスクはヘッジできるということが考えられるわけですが、実はもう1つあるのではないかと思います。
それが低金利環境を利用したということです。
このニュースでもありましたが、0コンマ数パーセントの単位で債券を発行しているわけなんです。それで資金を調達して、先ほど見ました通り、利回りが5%といった高いものがあります。これだけでも0.5%と5%だとしたら4.5%利回りが取れるということになり、ものすごく優位な取引です。
しかも商社株というと晩年割安なので、上がる可能性は低いかもしれませんが、逆にいえば、ここより下がる可能性というのも極限まで抑えられるわけです。
またバフェットがこれまでの本腰を入れた投資というのは、この5社に一気に投資するバルクのような買い方ではなくて、1社に集中しています。今のバフェットのポートフォリオのほとんどはアップルが占めますが、そういった買い方をしたと思います。なので、バルクで買ったということは、本腰を入れた投資とはやはり違うのではないか、ということが想像できます。
まして14兆円も余力資金がある中で、6,000億の債券を発行して買った、それもバルクで買ったということは、つまりリスクヘッジの取引をしたのではないかと考えられます。