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シャオミの「雷軍流」が中国を鍛え上げた。なぜ日本の家電は敗れた?=牧野武文

「音声操作」が快適すぎるテレビ

シャオミは、テレビも中国市場でトップクラスの売り上げを上げ、インドでもシャオミのテレビがヒット商品になっています。これもデザインはシンプルに、複雑な操作はテクノロジーを使うというのが基本コンセプトになっています。

シャオミのテレビには「小愛同学」という音声アシスタントが搭載されていて、基本的な操作は声で行います。「テレビをつけて」「テレビを消して」などだけでなく、「1時間後にテレビを消して」「朝7時にテレビをつけて」なども可能です。さらに「ヒーローものの映画を探して」と言って、リストが表示されたら、そこから「◯◯という女優が出演しているものは?」「無料で見られるものは?」と音声でどんどん絞り込んでいくこともできます。また、視聴中にも「30秒早送り」「5分巻き戻して」「54分12秒までジャンプ」という音声による命令ができます。

もはや番組表という概念は薄れ(内蔵はされている)、起動すると、過去の視聴履歴から算出された7つ程度の番組が表示されます。その中にはストリーミングサービスのものもあれば、テレビ放送されるものもあります。その中から選ぶだけなので、リモコン自体も実にシンプルです。十字キーの他は、ボタンが5つ付いているだけで、チャンネル番号のボタンなどありません。いわゆる成熟したスマートテレビになっていて、これも日本で発売されたらヒット商品になる可能性を秘めています。

中国のものづくりを変えた

シャオミの功績は、中国のものづくりの考え方を変えたことです。シャオミ以前の中国の製造業は、品質を後回しにして安くつくることを考えていました。当時の製造技術では高品質のものを作るのは難しいので、できるだけ安く作り、価格競争で勝負しようという戦術でした。当時、よく言われた「中国の人件費は驚くほど安いから」というのが中国製品の安さの理由のすべてではありません。戦略的に低価格を追求していたのです。

しかし、いくら安くても必要最低限の品質は確保しなければなりません。これも簡単なことではありません。そのため、「粗悪な中国製品」「安かろう悪かろう」のイメージが定着することになりました。

2010年にシャオミが創業した時、すでに中国でもiPhoneが人気となっていましたが、iPhoneのような品質の高い製品を作ることは中国には難しいと考えられていました。そこにシャオミが登場するのですが、シャオミは高品質を追求するのではなく、価格性能比を最大化することを考えました。

これは簡単そうに見えて、難しいことです。一般には、高品質の製品イメージからスタートして、でも、それでは価格が高くなりすぎるので、「削れる部分は削って」コストダウンをしていきます。でも、それでは必ず製品のバランスに歪みが生じてしまいます。

日本メーカーの初期のスマートフォンは、この罠に陥っていました。高性能のスマホを設計して、そこから「削れる部分を削っていく」やり方をしたのです。しかし、スマホは数々のチップ、センサーが協調して動作する仕組みになっています。日本メーカーの初期のスマホは、スペックだけを見ると決して悪くないのに、バランスが悪いために、使ってみると画面はカクカクし、バッテリーはカイロのように発熱するというものになってしまいました。

スマホ時代になって、日本メーカーが総崩れになったのは、この時に消費者の信頼を失ってしまったからです。

一方で、シャオミは、設計の段階から価格性能比を最大化させることを狙いました。自分たちの製造技術、消費者が必要とする機能、部品の価格などを総合的に考えて、価格と性能の間のスイートスポットを探るのです。

Next: 「消費者の80%を80%満足させる」シャオミ創業者の天才ぶり

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