米大統領選の投票日が迫り、SNS各社はフェイクニュース対策に躍起になっている。その努力は、実のところうまくいっていない。膨大な主義主張と意見があふれ、SNS運営者にも何が真実かわからなくなった現代では、利用者側が取捨選択するしかないのだ。では、どうすれば情報の真偽を見抜けるのか?(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
フェイクニュース対策に苦戦するSNS各社
アメリカの大統領選挙が迫っており、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は「アメリカ大統領選挙に先立って、厳重な不正予防措置を講じる」と述べた。政治広告も禁止し、意図的にフェイクニュースを流して世論操作を行う外国勢力のアカウントも削除する。すでにフェイスブックはかなり厳しい規制を敷いている。
グーグルも、利用者が情報を検索する際に表示される「オートコンプリート」機能を中立に保つように検索エンジンを強化する対策を発表した。
ツイッターは9月17日より誤解を招くフェイク情報、未確認情報、不正操作に関してはラベル表示で注意を促したり、投稿を削除する等の措置を行うと発表した。それぞれのSNSが11月までかなり対応を強化して大統領選挙に臨む。
以前からグーグルやフェイスブックやツイッターなどは、右派からも左派からも「偏向している」と攻撃されている。これらの企業は紛れもなくリベラル寄りなのだが、それでも何とかバランスを取ろうとして努力している。
その努力は、実のところうまくいっていない。
信用を失ったフェイスブック
特にバランスを取ることに失敗し、混乱の極みにあるのがフェイスブックである。
フェイク・ニュースの温床と見られ、ブランドが大きく毀損してしまったフェイスブックは、信用を取り戻すために必死で手を打っている。
フェイク・ニュースの拠点になっているアカウントを大量閉鎖し、フェイクの拡散を防ぐために利用者の信用格付けを開始するような涙ぐましい努力を続けている。
これまでフェイスブックはユーザーを増やすことだけに集中してきたが、今では新規ユーザーを取り込むことよりも、都合の悪いユーザーをいかに弾くのかに力を注がないとならない局面に立っている。
そうしなければ、再び「フェイク・ニュースの温床だ」と言われて存続すらも許されない局面に立ってしまうからだ。
「ユーザーを増やして広告を稼ぐ」というビジネスモデルは崩壊
SNS各社は、もう新規ユーザーを容易に増やせなくなった。誰でもウェルカムではなくなった。取り込んだユーザーも、監視して摘発して排除しなければならなくなった。利用規約も厳しくなっていく一方で、実際にアカウントを排除させたユーザーも続出している。
これは、「ユーザーを大量に取り込んで広告で稼ぐ」というビジネスモデルを持っているSNS運営業者にとってはかなり致命的なことである。
さらに、「ユーザーが妙な情報を発信していないか監視する」というのは、ユーザーにとっても居心地の悪い空間と化す。自由に何でも言えない空間なのだ。
その上に下手なことを書いたら、たとえそれが冗談でも、突如としてアカウントを削除されるような目にも遭うことになる。実際「なぜ削除されたのか分からないが削除された」という人もかなりいる。
こんな中でシステムを使用するのは息が詰まる。しかし、そうしないとSNSは世間から袋叩きに遭って存続の危機に陥るからそうせざるを得ない。
SNSというビジネスはかなり深刻なことになっている。SNSは管理を強化してもしなくても、大量の情報の中で問題を抱えている。
そんな中、グーグルもフェイスブックもユーザーを増やすために中国進出を考えていた時期もあったが、それも悪手だった。
中国を取り込んだら中国政府の意向も聞かなければならない。つまり、反中国の言動は厳しく取り締まられることになり、新しい偏向も生まれて批判の元になっていく。
グーグルもフェイスブックも中国共産党政権との関わりの中でトラブルを抱え込み、最終的に状況をコントロールできなくなるのは目に見えている。