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リストラ続出でも「景気回復」の統計マジック。政府と国民に深い溝=斎藤満

雇用賃金に結び付かない回復

つまり、政府のコロナ対策も、感染の抜本的な抑制策ではなく、特効薬の開発にも至らず、企業活動の根本的な改善策になっていません。

金融支援も含めて、対策の多くは一時的な「痛み止め」効果しかなく、根本的な治療にはつながらないため、企業は「危機モード」から解放されません。その分、投資も雇用も抑制し、コストの中でも最大の人件費の抑制に注力しています。

実際、輸出や生産は急回復したものの、雇用、求人は減少傾向にあり、失業率は昨年平均の2.4%から足元は3.1%に上昇しています。厚生労働省はコロナ関連の解雇、雇止めが10月16日時点で6万6,600人に達したと言っています。

業種別では製造業の1万2,160人が最大で、次いで飲食業の1万300人、小売りの9,100人、宿泊業の8,200人と続いています。地域ではやはり東京が最も多く、1万6,500人となっています。

ここへきて老舗の料亭、旅館も廃業に追い込まれるところが増えていて、今後はこれに伴う失職者も増える懸念があります。キャンペーンが行われている間でも、客は高級店、高級ホテルに偏り、客が戻らない飲食店、宿泊施設は依然として経営危機にあえいでいます。

キャンペーンが終了したときに、どれだけ客が戻っているか、その時の感染状況によっては、また落ち込むところが増える可能性があります。

そうした状況を考えれば、企業も雇用の増加には慎重になり、一部の人手不足部門を別にすれば、賃金も抑制され、ボーナスはさらに減少する可能性があります。ジョブセキュリティが保証され、給与の上昇期待が戻るまでは、個人の不安は解消されず、景況感はなかなか改善しそうにありません。

政府は正月休みの延長を企業に求めていますが、仕事の機会を奪われるパートには不安要素となります。

物価高の重し

個人の負担になっているもう1つの要素が、物価高です。

総務省が発表している消費者物価、特に日銀が物価の尺度にしている「生鮮食品を除いたコア」の物価は、このところ前年比マイナスとなることがあり、物価は下落していると言っています。

ところが、個人が肌で感じる物価は、「かなり上がった」と「少し上がった」を合わせると、65.9%の人が「上がった」と感じています。

この割合は、3月の64%、6月の63%からむしろ高まっています。しかも、個人が感じるこの1年間の物価上昇率は、平均値で3月が4.0%、6月が4.8%、そして9月は5.1%に上昇しています。

個人が日ごろスーパーや食品店でみる食材が大きく上がったこともありますが、「GoTo」などを利用しない人々や幼児教育無償化の恩恵を受けない人々には、物価は上がっている、との印象が強いことを示しています。

特に、コロナの感染が拡大してからは、マスクが入手困難となり、アルコール消毒液や各種衛生用品やカップ麺などの「値引き」がなくなり、実質値上げが進み、パンや乳製品など大きさ、内容量が減って実質値上げされたものも主婦には「値上げ」の印象を強くしたと見られます。

Next: どうすれば景気回復を実感できるのか?

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