危機感の後退、緩みも
先日地下鉄半蔵門線内で、マスクの付け方について注意した人が、催涙スプレーをかけられた事件がありましたが、マスクを着用しない人や、せっかく着用しても顎にかけているだけという人も多くみるようになりました。
春の緊急事態宣言時と比べると、明らかに危機感が後退したか、緩みが出ているように見えます。
駅前のハンバーガー・ショップの前にはスマホを持った人の長蛇の列ができて、前の人と触れそうな距離で並んでいます。銀行など、混雑時には入店規制をしたり、足跡マークをつけて距離をとって並ぶよう促すところもありますが、スーパーや普通のお店ではソーシャル・ディスタンスも守られなくなっているケースが少なくありません。
飲食店でも寒くなってドアや窓が閉められ、換気が不十分な中で、隣の席との距離も不十分で、衝立のない店も少なくありません。換気が良くないために、屋内感染やそこでのクラスター発生事例も示されています。
政府は飲食代割引きで消費を刺激しようとしていますが、そこでの感染防止は企業や顧客任せの状態にあります。
キャンベーンを行っても、感染がまた拡大して国民が不安になれば効果がそがれ、さらに日本も欧米並みに感染が急増すると、再び経済活動を制限せざるを得ない事態になります。
経済優先でいられるのも、感染が今程度に収まっていることが条件になり、欧米のようにまた感染が急増すれば、キャンペーンどころではなくなります。
また入国管理の規制緩和も感染拡大リスクを高めます。
情報開示を
政府の経済優先と、国民の感染不安との間にギャップがあるように見えます。
政府は「正しく恐れる」と言い、一部には日本の感染率、致死率の低さが政府の経済優先姿勢の背後にあるとの指摘もあります。日本には欧米と違った「何か」があってさほど心配しなくても良いのなら、国民の過剰な不安を軽減するためにもその情報を開示すべきです。
そのためには新型コロナの特性や、日本で広がっているものと欧米のウイルスとで違いがあるのかどうかも説明が要ります。
「正しく恐れる」ためには、新型コロナの特性、危険性についての十分な情報が必要です。それがないと、重症化しやすい高齢者や基礎疾患を持つ人はずっと不安から解消されず、政府が旗ふりしても旅行にも外食にも行けません。
実際、総務省が発表した9月の「家計調査」報告を見ても、家計全体でみると旅行や外食は落ち込んだままで、キャンペーン利用者は一部の若い人々に限られている可能性も考えられます。
皆が旅行しても外食に出ても心配ないのなら、それなりの判断材料の提供が必要です。