ロシアはすぐにでもウクライナに侵攻するのではないかと、世界中のメディアが書いている。しかし、ロシアがここまでウクライナ執着するのには合理性があり、また米国内では意見が二分しているため、最終的にはバイデン政権は妥協を強いられることになりそうだ。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年1月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ロシアは本当にウクライナに侵攻するのか?
ロシアのウクライナへの軍事侵攻と、欧米の介入の可能性について解説したい。
いま欧米や日本の主要メディアでは、ロシアのウクライナへの軍事侵攻の可能性は極めて高く、下手をすると侵攻は時間の問題ではないかとする報道が多くなっている。
ロシアはウクライナとの国境に10万人から12万7,000人の軍を展開し、盛んに演習を実施している。ウクライナへの圧力だ。また、地中海ではアメリカ、イギリス、フランスの空母を動員した軍事演習が予定されている。一方ロシアもこれに対抗し、同じ地域でロシア海軍の演習を計画している。
そうしたなか、24日、米国防総省はウクライナ周辺の東欧地域に最大8,500人規模の米軍を派遣する準備に入ったと明らかにした。軍事侵攻があると「北大西洋条約機構(NATO)」は4万人の即応部隊を派遣するとしているので、米軍はこれと一緒に行動することになる。
また25日、米バイデン政権は、ロシアのウクライナへの再侵攻があれば厳しい経済制裁を発動するとした。それは、半導体などのハイテク製品を想定した輸出規制、ロシア産天然ガスを排除する資源規制などだ。
バイデン政権は、こうした経済制裁の発動でロシアは収入を得る機会を失い、ロシア経済は脆弱になると見ている。
ウクライナ問題の金融市場への影響
しかし、このような経済制裁の発動は、ロシア経済に影響するだけではない。ロシアはエネルギーや鉱物などの資源大国で、また食料の生産でも無視できない世界シェアを持つ。ロシアが逆に欧米に対して経済制裁を発動すると、ロシア産資源の供給が細り、世界的な生産活動に大きな影響が出る。以下がロシアが握る資源の世界シェアだ。
・天然ガス:17%
・原油:11%
・パラジウム:42%
・ニッケル:11%
・小麦:11%
これを見ると、もしロシアが欧米に対して報復の経済制裁を発動し、これらの資源を禁輸すると世界経済は大変な影響を受けることになる。
特にヨーロッパは、天然ガスの消費量の約30%がロシアに依存している。ロシアのウクライナ侵攻が起こると、ヨーロッパの天然ガス価格は3倍になる可能性がある。事実、24日には前週末比で一時的に19%上昇した。日本のロシア産ガスの輸入割合は10%程度だが、ロシアからの輸入が滞れば中東産などの奪い合いになり、日本が買い負けるリスクがあるとも懸念されている。
このような影響を警戒して、金融市場も大きく落ち込んだ。24日のヨーロッパ株は4%安と急落した。さらに翌25日には、日経平均株価が5カ月ぶりの安値を付け、米ニューヨークダウも一時800ドルを超えて下げた。また、最近は株式相場との連動を強めている暗号通貨も大きく下落した。ビットコインなどは半値にまで落ちた。
Next: そもそも、なぜロシアと欧米は対立しているのか?