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NHK受信料削減の切り札「Eテレ売却」にTV各局が反対するワケ。田中角栄と電波利権の闇=原彰宏

「電波オークション」は納税者の利益につながる

2020年のノーベル学賞受賞者は、「オークション理論の発展への貢献」として、スタンフォード大学のポール・ミルグロム氏とロバート・ウィルソン氏の2人が受賞しました。

オークションといえば「絵画オークション」を想像される方も多いでしょう。若い人には「ヤフオク(ヤフーオークション)」が身近なものかもしれませんね。私もかつて引っ越しで車を手放すときに、ディーラー買取ではなくオークションで高く売った経験があります。

受賞理由は、「電波の周波数の割当など、従来の方法では売ることが難しかったモノやサービスに使われる新たなオークションの制度設計を行い、世界中の納税者の利益につながった」としています。

「納税者の利益につながる」のが、オークション技術だとしています。ここがポイントでしょう。まさに「電波オークション」のことです。オークションに馴染みがなかった、一見難しいとされたものまでもオークションの対象とすることができる研究が、高く評価されたようです。

電波オークションと言われていますが、法律上では「周波数オークション」となっているようで、これは電波法の規制に基づくもののようです。ここでは便宜上「電波オークション」に統一します。

昨年2月の電波法改正案で、「周波数の経済的価値を踏まえた割当手続」では、いわゆる“電波オークション”と呼ばれている仕組みが部分的に導入されました。

これまでの審査項目も継承され、オークションだけで決まるわけではないため、総合入札型ということになります。

電波オークションとは、国などが、電波を地域や周波数帯によって事業免許を割り当てる際に、割当先をオークション(競争入札)方式で決定するやり方です。つまり、より多くの金額を提示した事業者に決定することになります。

電波オークションの導入目的は、電波利用権を財産権として構築することにあります。あくまでも建前の話です。ただ忘れてはいけないことは、国民共有の財産である電波を対象としているということです。

「電波は誰のもの?」に対する答えは、「国民のもの」とならなければなりません。つまり、電波は国民全体の共有資源です。「公共の電波」という表現が、その精神を示したものになります。

総務省は、国民に変わり責任を持って、電波の割り振りを行っているという立場になります。

既存のテレビ局が電波オークションに大反対するワケ

電波オークションとはいえ、誰もがオークションに参加できるわけではなく、電波使用には免許が必要で、そこに利権が生まれます。電波ですから、テレビだけでなく、携帯電話の通信に使う電波もありますね。

理論上、日本テレビやTBS、フジテレビ、テレビ朝日の周波数帯をオークションにかけて、一番高い値段を出したところに周波数を売却することができます。

例えば、ソフトバンクが“兆”という単位の金額で入札すれば、かつて、豪州のメディ王ルパード・マードックと一緒に買収しようとしたテレビ朝日の周波数を、手にすることができます。堀江貴文氏が免許をとってフジテレビの周波数を手にすることも、理論上は可能です。

だから、既存テレビ局は、電波オークションには大反対なのです。冒頭ご紹介したように、NHKも高橋洋一嘉悦大学教授の提案する「Eテレ」周波数帯売却に同意するはずがないのです。

電波は国民の財産で、一部報道局が独占して良いものではないのですがね。だから大手メディアなどは、放送法で縛られているのだとの説明もありますね。

先進国で電波オークションがないのは日本だけのようです。電波オークションのシステムはもともと米国で始まったものですが、1990年代に携帯電話が普及し、今後を見据えて周波数帯を開放して有効に利用しようという意味もあって、電波オークションが始まりました。

日本は電波利権が守られていて、電波の規制緩和はタブーとされています。テレビ局のロビー活動が功を奏していると主張する堀江貴文氏は、自身の経験も踏まえてこう述べています。「電波資源を浪費している」。

地上波のデジタルは40チャンネル分の周波数帯を使っています。県域放送、つまり県域免許で各県に必ず1つはテレビ局があり、そのテレビの周波数が、隣の県とバッティングしないように、わざと使わない周波数帯を保有しているのです。周波数がかぶっていたら、別のかぶらない周波数帯を使うために、わざと使わなくても、多くの周波数帯を所有しているのです。

電波に県境はなく、そもそも県ごとにテレビ局を独立させること自体に無理があるのですが、これは政治家にとっては非常に有利で、地方議員の政治活動の宣伝にも使えますし,何より地方議員の利権の温床にもなるのです。

米国のTVチャンネル数に比べて、日本のテレビ局が少ないのもよくわかりますね。

Next: なぜ電波オークションは導入されない?田中角栄が作った利権は強固

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