東京五輪が終了しても続くコロナ禍のなか、日本全体が不感症に陥っているように思われます。それは議員たちも同じで、30%を切った内閣支持率にも政界は動揺しているようには見えません。しかし、その中で派閥の領袖たちだけが「菅おろし」に向かってうごめいているようです。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2021年8月18日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本社会のアパシー(不感症)化
アパシーとは、何事にも感情が、活き活きと動かなくなった状態を言います。うつ病の症状ともされます。
多少極端な表現ですが、日本では、2021年の大きな政治的行事とされていたオリンピックのあと、社会的な「アパシー(不感症)」が起こっているように感じています。
要は「反応が鈍い」のです。
<メディアも反転>
パラリンピックを前にした緊急事態の9月12日までの延長は、政府寄りだったメディアすらも、その効果を疑うように変化しました。
メディアも世論調査を見て、政権への態度を変えます。
内閣への支持率が下がると、空気の流れで動く風見鶏のように、政権非難に転じます。
自民党内は、表面は、平穏に見えます。しかし、裏では「菅おろし」寸前に来ているようです。
<菅自民党総裁の理由>
菅首相は、安倍派(細田派:61名)、麻生派(42名)、そして二階幹事長(二階派は37名)の得意な寝技での派閥まとめから、安倍首相辞任のあと、20年9月に誕生しました。二階幹事長は、面妖な人物です。
菅首相の目論見は、五輪の強行を通じて政権への支持率を高め、9月初旬に自分の手で衆議院を解散し、自民+公明で過半数で政権の認証を得て、無投票で自民党総裁を続けることでした(元朝日新聞記者:佐藤章氏情報)。
<危機ラインの内閣支持率>
ところが、五輪のあとの政権支持は、危機ラインの29%(NHK)に下がり、7月までの予定は雲散霧消しました。
自民党の沼から、突然、高市早苗氏の総裁選立候補が浮上しました(文芸春秋10月号:発刊は9月1日)。高市氏は安倍派です。安倍前首相から内々に言われることがないかぎり、立候補は表明できません。安倍前首相は、NHKの世論調査を見て、突然、反旗を上げたのです。
同時に、ワクチン大臣の河野太郎氏を擁する麻生副総裁(財務大臣)も、安倍氏に同調しました(佐藤章氏情報)。
このときに、派閥を持たない菅首相の次期総裁(3年)の根拠は消えました。もともと安倍氏(細田派)と麻生氏(麻生派)の支持で総裁になっていたからです。
高市氏は、自民党の政局では必ず出る「当て馬」でしょう。
本命は、国民の人気が高い河野太郎氏(麻生派)でしょうか。
本命はギリギリまで出ず、国民にサプライズを与えるのが過去からの手法です。