投票率が上がらないと政権交代は望めない
戦後からの衆議院選挙の投票率の推移をみますと、80年代後半(つまり昭和の終わり)までは、多少の上下動はあるものの、一貫して70%台以上を維持してきたことがわかります。
平成に入ってからは60%を割り込む状況も示現しましたが、2009年に自民党から民主党に政権が移行することになった総選挙では69.78%と、やはり7割近い投票率を回復させています。
そういう意味では、今回の総選挙の投票率の低さでは、政権交代などまったく望むこともできない状況であったことは明確です。
貧困化に一因?上がらぬ投票率
そこで問題となるのが、なぜここまで投票率を引き上げることができないのか?という疑問です。
ある識者は、学校における民主主義教育の問題をその主たる原因として挙げていますが、実はそれとはまったく別の問題があるのではないかと思う次第です。
それが世帯年収低下、つまり貧困化が起因しているのではないか、ということになります。
日本の世帯年収平均は、ほぼ550万円前後で推移しているように見えますが、中央値はすでに430万円を割り込みはじめており、分布としてはこの平均所得に対して61%が下回り、そのウェイトは年々増加してきています。
最近では日本の給与がなぜ上がらないかということが大きくクローズアップされていますが、日本の世帯年収はそれでも年々低下の一途をたどっています。
中でも注目すべきは、低所得者層の割合です。年収100万円以下がほぼ7%、100~200万以下が13%弱、200~300万以下が14%弱ということで、このあたりの人たちが投票行動の低下に寄与している可能性がありそうだということです。
万年低所得世帯が夢も希望もない絶望的生活者クラスタとなっている可能性
年収100万円以下と300万円では随分と状況は異なるものになりますが、最近ツイッターでも話題になった「手取り月給13万円」では、まともな生活をしようとしても如何ともしがたいという話はかなり現実的なもので、年収200万以下の層はほぼこれに匹敵する状況です。
日本では古来から「貧すれば鈍する」などという言葉がありますが、生活が貧しくなってしまい金銭的な余裕を失ってしまうと、心までもが貧しくなり、判断力が鈍ったり知恵が衰えたりするなど、愚かな人間になってしまうということを示したこの言葉がまさにこの層にあてはまるのではないかと考えられます。
つまり、日々生きるのが精一杯で、政治のことなど考えていられないというクラスタが想像以上に大きくなっており、どれだけメディアやネットで呼びかけてもまったく響かなくなっているということが考えられます。