線引きが困難な批判と中傷
単なる悪口と侮辱をどう区別するのか。その明確な基準を設けることは、非常に難しい状況にあります。
ただ、明確な「犯罪」となった以上、これまでよりもこの基準は、たとえ明確に示さないとしても大きな問題になります。
取り締まる側の恣意的な判断による摘発…。悪口を言うと犯罪になるかもしれない。という考えによる「萎縮効果」が気になるところです。
「侮辱」が本格的な犯罪になると、萎縮効果が強く働きます。本来は適法で、刑法が介入するべきではない言論まで、萎縮してしまうことになりかねません。
政治家への批判も侮辱罪になるのか?
「表現の自由」は、どこまで守られるようになるのでしょうか。
政治家の批判ができなくなる……「侮辱罪」の運用次第では、政治家への批判も、政権批判も取り締まることができるようになるのでは?といった意見も散見されます。
過去にはライブ配信に出演する被害者に対し「ブタ」と発言したり、ネット掲示板に実名とあわせ「アホ丸出し」と書き込みしたことで摘発されているようです。
法律は運用次第。法整備は重要ですが、法は運用する側のモラルも問われます。
国民の行動を縛る法であればあるほど、強制力と同時に、その方を扱う側の倫理が強く求められることを、国民は理解しなければならないと思います。
法の使い方に問題はないのか。その行為までは規制できないのが、現状ですからね。
民事訴訟法の改正も閣議決定
今回は「民事訴訟法のIT化」を含めた民事訴訟改正案という別案件も、閣議決定されました。
法務大臣の諮問機関である法制審議会が、法改正に向けた4つの要綱を決定し、古川法務大臣に答申したものです。
このうち民法の改正に向けた要綱では、離婚から300日以内に生まれた子どもは前の夫の子と推定すると規定されている「嫡出推定」の制度をめぐり、再婚している場合は、離婚から300日以内に生まれた子どもでも、今の夫の子と推定するとしています。
親が教育や監護を目的に子どもを懲戒することができる「懲戒権」について、規定を削除することも盛り込まれました。
民事訴訟法の改正に向けた要綱では、民事裁判での手続きのIT化を進めるため、オンラインで訴状を提出できるようにするほか、口頭弁論でウェブ会議の活用を認めるなどとしています。
法務省は、民事裁判での手続きのIT化に加え、個人を特定する情報を明らかにせずに手続きを進められる制度の創設などに向けて、今の国会に民事訴訟法の改正案を提出し、成立を目指す方針です。
これらは、法制審議会を1年半ほど、23回も継続して開いて、慎重に議論して、ようやく案ができました。また、法制審議会の前に検討会と研究会を2回開催しています。