これまで多くの若者たちの間で持て囃されてきた、経済的に自立し早期リタイアを目指す「FIRE(Financial Independence, Retire Early」だが、ここに来て「FIRE卒業」なるワードがSNS上で大いに取沙汰されているようだ。
株クラの次のブームはFIRE卒業か
皆さんFIREを卒業されて社会人としての第一歩を歩まれるそうです。 pic.twitter.com/GnFgtYR0wd— 3倍ETFマンTMV教会 (@3X_ETF) November 1, 2022
FIREブームの次はFIRE卒業ブーム?
— しおいぬ社長@不動産会社経営・不動産投資・こじかつ (@a2YBqUFUndNlqjN) November 3, 2022
FIRE卒業がトレンドでワロタ pic.twitter.com/hkNHzkTS0P
— めでゅ(めっぽうドット) (@investor_medu) November 3, 2022
FIRE生活に区切りを付けて再度就職すると宣言した人物のツイートがきっかけで、バズる格好となった「FIRE卒業」。
悪癖などから足を洗うことや組織などからの解雇や降板といった、何らかのネガティブな意味合いを緩和するといった意図で使われることが多くなって久しい“卒業”という言葉だが、今回の件に関しても耳障りの良いワードとは裏腹に、実際のところは「元に戻るだけ」「再就職」「失敗」なのではという声、さらには「そもそもFIRE達成してなかったんじゃ?」という厳しい見方など、多くの人々からツッコミが寄せられているといった状況だ。
"FIREからその先へ"に総ツッコミw pic.twitter.com/ofIXgRblSC
— ゼロトラスト•節電中⚡ (@kabuman1000) November 3, 2022
FIREからその先へwwww
だめだお腹痛いwww
元に戻るだけやろwww— ふかひれ (@shark_samesuga) November 3, 2022
【 どうでもいい話 】
FIRE卒業というワードが話題に上がってますが、、そもそもFIREしてもないでしょ笑。マトモな方なら驚くことでもなく早かれ遅かれそうなるのは予想してたのでは?年齢にもよるが5,000万円や1億円ごときで笑。ちなみに私がフォローしてる方で本当にFIREしてるのは1人かな笑。
— 【公式】魅惑のスナフキン@不動産投資®【りき大】 (@Snufkiin_invest) November 3, 2022
「FIRE卒業」に至る2つのパターン
FIRE自体に批判的な層が主に中心となり、SNS上で大いに盛り上がっている「FIRE卒業」だが、それに至るパターンは大きく2つに分かれるのではという見方が根強い模様。
一つ目は、FIRE達成によって経済的自立と膨大な自由時間を手に入れたものの、“毎日が休日”といった日々を持て余してしまい、むしろ何もしないことに疲れてしまったというパターン。
実際、外資系金融出身者でFIREを達成した方でも、悠々自適の日々は一か月ほどで飽きてしまい、あまりの暇に耐えられなくなって仕事を始めるというケースは多いのだとか。また既婚者の場合だと、FIRE達成で家にずっと居るようになった旦那の存在が、奥さんにとっては多大なストレスになって……といった話もあるようだ。
FIRE卒業は私には見えていた結論
GSの人が何人もFIREしたけど、暇に耐えられなくなって仕事を始める。
最初の一週間は開放感
昼まで寝て、高級寿司を食べて、映画みて、ゴロゴロして、散歩して、リゾートに行って。
そんなの一ヶ月で飽きる。
— 加納裕三@bitFlyer (@YuzoKano) November 4, 2022
FIRE卒業に対する見られ方は一つしかないのはわかるけど、自分の経験では一日中家にいて3食共にしていると2年目から妻の機嫌が徐々に悪くなり3年目にはヤバい状況になったので事情は一つでは無いと思います。
— Vagabond (@CoccoCouple) November 3, 2022
これらは言ってしまえば“贅沢な悩み”といった類の話だろうが、そのいっぽうで切実なのがもうひとつの「FIRE計画の思わぬ破綻」だ。
主に資産のあまりない若者に向けて、広く流布されていた「年間支出の25倍の資産を年利4%の運用益で回せばFIREを実現できる」という定説。具体的には「年間支出250万円なら6,250万円でFIRE」というラインが、現実的な目標として掲げられることが多かったようだが、正直そこまで到達するのは厳しいという向きの間では、支出の見通しをさらに下げることでFIRE達成のハードルを下げたという、いわゆる「ギリギリFIRE」と呼ばれるような人々も多く存在した。
ただ、この「年利4%の運用益」をキープするための生命線として、多くの人がアテにしていたのが米国株だが、その“神通力”に陰りが見えたことで、計画の大前提に大幅な狂いが生じることに。さらには昨今の物価上昇によって、支出も目論みより増えてしまうという、まさにダブルパンチといった状況に陥っているというのだ。
また特に「ギリギリFIRE」の場合、独り者が仕事をせずにただ食べていくだけなら、日々切り詰めればなんとかなるものの、持ち家やクルマなどの所持、あるいは彼氏彼女との恋愛やその後所帯を持って……といった営みが、すべてコストがかかりすぎるということで切り捨てざる得ないことに。
家、車、結婚、家族が人生の4大コストか
新築戸建注目住宅、車3台、既婚、子供3人。これではFIRE無理かな。残念だ。すごく残念だー— Key(ケイ)@投資大喜利おじさん (@Key_amzn8) May 15, 2022
最初のうちは「FIRE達成で経済的自立を手に入れた!」と意気揚々なものの、時が経ち次第に周りの同世代の人間が恋愛や結婚、愛の巣にマイカーで子どもにも恵まれて……といったありきたりの幸せをコツコツと手に入れる様を目のあたりにすれば、自らの乾いた人生に絶望するということも大いに考えられるところ。こういった金銭的のみならず精神的な面での行き詰りで、FIRE生活の“卒業”を選択する者が増えているのではという見方だ。
「FIRE卒業」の再就職は困難を極める?
このように様々な理由により増えているとされる「FIRE卒業」だが、先述のようにもともと外資系金融に勤めていたというのならともかく、多くのパターンで「再就職も厳しいのでは?」といった心配の声もあがる。要は、仕事を辞めてFIRE生活を謳歌していた期間が、いわゆる“経歴の空白期間”と見做されるのではというのだ。
FIRE卒業、投資で成功したからと職を辞めた同僚を10年後にコンビニバイトで見かけるみたいなニュアンスを感じる。というかブランク次第ではバイトすら無理では。世間的には無職なんだから。
— 戦争の足音が枕元に近づいてくるのを感じる枢密院勅令 (@order1914) November 3, 2022
FIRE卒業とフリーランス卒業
会社辞めてフリーランスになったけど会社員に戻る人いるやん?
それで元々より好条件になってればいいけど条件悪くなる人も多いよね
不景気になると夢見せるのが上手い人達が夢を見せてくれる
あくまで夢なんで現実にはならないんですけどね
おやすみ
安らかに— ちび猫きのこたけのこ戦争より乳か尻戦争や (@cibinecoblog) November 3, 2022
そもそも、そういうことを気にすること自体が社畜的思考だという声もあるのだが、実際問題として経歴に存在するそういった空白期間に関して、「FIREを達成して…」という説明で納得してくれる会社が多いかといえば、それは大いに疑問符がつくところ。なかには「世間的には無職」といった厳しい視線もあり、結果としてFIRE前よりも条件が厳しいところで働かざる得ないケースが多くなるのでは……という見方だ。
このように、当事者にとっては“余計なお世話”といった話まで飛び交っている「FIRE卒業」を巡る議論だが、もちろんこれらが“嫉妬”が原動力となってなされているというのは、多くの人々が指摘するところ。
FIRE卒業がトレンドになってるのを見て、どうせ株クラの反応なんか「無職が再就職するだけじゃねえか」「今年の株安で貯金が底を尽きたんだろ。ざまあww」「世の中甘くないことが分かって良かったねww」とかだろと思ったら、まっっったくその通りだった。株クラの成分の8割は妬みと僻みでできていますw
— ようしゅう (@you_shu1) November 4, 2022
「FIRE卒業」への嘲笑の反応を見るに日本人って本当に妬みの文化なんだなあと
— もちぐま (@yOyJAdnoW35EyVS) November 3, 2022
FIRE卒業ってそういうことか。
なぜか他人の人生を叩いてる人間の嫉妬が
1番醜いわ~。— God (@tisiki123) November 3, 2022
SNS上では、特に「ギリギリFIRE」と呼ばれる向きは馬鹿にされがちだが、とはいえそれすら達成できた者が如何ほどいるかといえば、まさにほんの一握り。FIREという言葉がまだ無かった時代にも、いわゆる「アーリーリタイヤ」が持て囃され、FXや仮想通貨、果てはレバナスなどに挑む者は絶えずいたわけだが、結果的には虎の子の資産を溶かして憤死していった者が大多数なのは言うまでもない。
もっといえば、そういった投資に打って出れるだけの、ある程度のまとまったタネ銭すら確保することも叶わず、巷で盛り上がるFIREブームを指をくわえて見守るしかなかった者はさらに多い。そういった向きが、今回取沙汰されているFIRE達成者らの“凋落”に、大いに留飲を下げているというのだ。
逆にいえば、それだけFIREというものの存在が、アンチを含め多くの人を魅了していたとも言えそうだが、とはいえ今回の一件が、あれだけ大盛り上がりだったFIREブームに対し、大いに冷や水を浴びせる格好となったのは間違いのないところ。
そもそもFIREというものは、自己実現を果たすため経済的余裕や時間を確保するための“手段”だったはず。それがいつの間にやら、FIREの達成自体が“目的”となってしまったことが、今回の「FIRE卒業」というよく考えれば珍妙な事態の続出を招いているとも言えそうである。
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