俣野:もしかすると、工事自体が杜撰だった可能性もありますね。
丸山:確かに。オーナー様がメンテナンスを一切していなかったため、屋根に亀裂が入り、長年、雨漏りがしていたようです。当然、部屋が埋まるわけもなく、崩落した5階は、もともとすべて空室でした。
私が下見に行った時は、4階から空が見える状態になっていました。崩落でケガ人が出なかったのが、不幸中の幸いです。
俣野:この物件は、どのような経緯で見に行かれたのでしょうか。
丸山:オーナー様から、「物件を売却したい」とのお話をいただきました。かなり割安な物件で、利回りが高くなる設定になっていました。
しかし実際に現地に行ってみると、この有様です。ここまで傷んでしまうと、お引き受けするわけにもいかず、手を引いた次第です。
不動産オーナーを志す方の中には、机上で「数字が非常に良い」「利益が大きい」というだけで飛びついてしまう人がいます。やはり、「安い買い物には必ず理由がある」ということを、肝に銘じていただきたいと思います。
家賃保証は、後になって高くつく場合が多い
俣野:最近の問題物件といえば、かぼちゃの馬車事件が有名ですよね。
丸山:はい。2018年に発覚した“かぼちゃの馬車”というブランド名で展開されていた女性向けシェアハウスをめぐる事件です。
かぼちゃの馬車の運営会社・スマートデイズは、投資家に対して30年間家賃保証や年8%以上の利回りを謳う一方、非常に割高な物件を販売していました。スルガ銀行が同社と結託して不正融資を行なうなど、世間に大きな衝撃を与えました。
この事件で使われたサブリースという手法は、投資家が購入したアパートやマンションを不動産業者が一括で借り上げ、入居希望者に転貸するというものです。
サブリースは家賃保証されるといっても、部屋が埋まらない場合、運営会社はオーナーに対して減額交渉が可能となっています。この事件をきっかけに、サブリースに規制が設けられたほどです。
俣野:それだけ、世間を震撼させたということですね。丸山さんのところにも、かぼちゃの馬車の被害者から相談が寄せられたのでしょうか。
丸山:かぼちゃの馬車に限らず、サブリース絡みの相談は多く受けています。
サブリースは、契約が履行されている間はいいのですが、不動産会社が倒産してしまったり、「サブリースをやめます」と言われたりした場合、赤字に転落してしまうオーナー様が多いのが実情です。