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台湾のイメージ失墜を狙った中国の情報戦?大分・由布院「24万円宿泊キャンセル」騒動、日本よりも台湾で報道が過熱した理由

大分の由布院温泉にある旅館で、台湾人旅行客が計約24万円分の宿泊を直前キャンセルし、連絡が取れなくなるというトラブルがあったと報じられている。

読売新聞の記事によれば、その台湾人旅行客は今年1月20日からの2泊という日程で4人分を予約。料金は料理代を含めて合計約24万円にのぼったとのことだが、宿泊前日の19日になって、それ以前に宿泊していたという福岡県内の民泊施設から同旅館に対して、キャンセルする旨の電話が入ったとのこと。

旅館側は台湾人旅行客と直接確認しようと電話やメールをしたが連絡が取れず、また当日にその台湾人旅行客らが現れることはなかったという。

この直前キャンセルの件は、すぐさま台湾メディアが報道するところとなり、その台湾人旅行客の行動に対しての批判の声が噴出。その後23日には、旅館側に謝罪する電話があったといい、宿泊代も支払われる見込みとなったという。

日本国内より台湾で話が急拡散した経緯

1月下旬は中華圏における春節(旧正月)ということで、おおむね10日前後あるという長い休暇を利用して、台湾からも円安でお得な日本へ旅行に来るという方はかなり多いとのこと。

特に由布院温泉は日本でも有数の温泉地であり、中国や台湾から距離的にも近いこともあってか、大いに人気を博しているようで、近年では日本人観光客よりも中国人や韓国人などの外国人観光客のほうが目立つといった声も多いようだ。

いっぽう、今回トラブルが発生したという旅館だが、名峰・由布岳が一望できるという閑静な立地で、ご当地・大分名産の関アジやおおいた和牛を用いた料理が堪能できるという、いわゆるオーベルジュ。ちなみに公式サイトを見てみると、日本語と簡体中国語の2言語の表示に対応となっており、欧米人よりも中華圏からのインバウンド客をとにかく獲得したいといった狙いが、大いにみてとれるところである。

さて今回のトラブルだが、そもそも宿の無断キャンセルといった話は、旅館業界隈では“よくあること”でもあり、その個別の事案が広く報道されるといったことは、よほどの高額だといったような要素でも無い限り稀といったところ。

ただ今回の件に関しては、台湾の現地メディアである中央通訊社の日本語版「フォーカス台湾」の報道によると、旅館の従業員から台湾メディアに情報提供があり、それがきっかけで報じられるに至ったようだ。

確かに中華圏からの観光客を重視している旅館なら、中国語に堪能な従業員も当然在籍しているはずで、現地メディアへの情報提供ぐらいは朝飯前といったところ。こういった経緯があったがゆえに、日本国内よりも台湾において、今回の話がより早く広まる展開になったというわけだ。

通報を受けた台湾メディアの報道により、件の台湾人旅行客に対しては、あろうことか国外で宿予約をすっぽかすという無法を働いた恥知らずといった論調で、SNSなどで批判の声が噴出する事態となった模様。

ただその反面で、ここまで話が大ごとになってしまったことに関して、違和感を覚えるといった向きも少なからず存在し、なかには台湾人のイメージを国内外で毀損させるために、大陸側がこの話を精力的に拡散しようとしているのでは……といった憶測を唱える者も。

このように“台湾の恥”といった大仰な話にくわえて、中国側が仕掛けた“情報戦”だといった陰謀論の要素まで絡まったことで、単なる宿泊キャンセル&踏み倒しの話だったはずの今回の件が、台湾ではかなりの大きな話題となるに至ったようだ。

日本からは「なぜクレカ番号を把握しない?」との声

いっぽうで、日本国内における今回の件に対する反応として多いのは、「なぜクレカ番号を把握してない?」といった、現地決済という手段の限界を取沙汰する声。

大昔なら宿泊施設への電話予約&現地決済は当たり前だったものの、最近では宿泊予約サイトあるいは宿の公式サイトから予約し、その流れでカードで事前決済をするというパターンが恐らくは大多数に。しかしながら、今回トラブルがあった宿も含めて、サイトで予約するにしても決済は現地で、という選択肢を残している宿泊施設も実際のところは多い。

宿泊地を含めた旅の予定が変更になる可能性がある、また決済の分かりやすさといった面で、今でも現地決済を望むという客は多い……というのがその理由のようなのだが、宿泊施設側からすれば、今回のような直前などでのキャンセルがあった場合には、所定のキャンセル料などを取りっぱぐれる可能性も当然懸念されるところ。

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要は、昨今大いに取沙汰されている回転寿司店の話と同様、予約した客は必ず当日は来訪してくれる、仮にキャンセルの場合はキャンセル料も払ってくれるといった、いわゆる性善説が前提となっている現地決済のシステムは、今後立ち行かなくなるのでは……といった見方が広がっているようなのだ。

今回の件に関しては、台湾人旅行客のほうも悪意はなかったようだという現地メディアの報道もあり、春節の連休明けには全額賠償するとの申し出があったとのこと。また宿側も、今回の件で台湾人旅行客に対し偏見を持つことはなく、引き続き歓迎したいとのコメントも残しており、当人同士の話としてはほぼ一件落着といったところ。ただ、現地決済という伝統的な手段の是非を巡っては、今後も議論が続くこととなりそうである。

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