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鹿児島県の原子力防災アプリ、開発に8億円かけてDL数は3000人。地元住人も知らない「周知不足」と官製アプリへの「疑心暗鬼」が原因か

鹿児島県が8億500万円もの予算をかけて開発し、2022年4月から運用を開始した原子力防災アプリのダウンロード数が、なんと3,000人程度に留まっているという地元紙の報道が、大いに物議を醸している。

渦中のアプリは住民情報を登録して利用するもので、避難車両の乗車時や避難所に入る際には、アプリのQRコードを提示するだけで手続きが完了するほか、家族や友人の避難状況、最寄りのモニタリングポストの空間線量も確認できるとのこと。

ただ、運用開始から10か月経つもののダウンロード数は約3,000程度だといい、九州電力川内原発から半径30キロ圏の人口約20万2,000人と比べても、1.5%弱に留まるという。

県は広報紙や住民説明会でダウンロードを呼びかけも…

鹿児島県の北西部に位置し、約9万人の住人を擁する薩摩川内市。その沿岸部にある川内原発は、九州電力としては2か所目の原発として1984年からは1号機、85年には2号機が相次いで稼働開始。2基ともにそろそろ40年の運転期限を迎えるのだが、運転延長に向けての検討が続いているという。

さらに川内原発といえば、3号機の建設計画も長らく議論されているようで、今後もしばらくは原発と地域住民との共生が続くことになるといった状況のようだ。

そんな川内原発で万が一事故が起こってしまい、住民の避難なども必要となる事態となった際に活用しようということで作られた原子力防災アプリなのだが、肝心のダウンロード数のほうは伸び悩み。SNS上では、その原因が取沙汰されているところだが、やはり多いのは「周知不足ではないか」という見方。

報道によれば、県は各種広報紙や住民説明会でダウンロードを呼びかけてきたということだが、実際のところ薩摩川内市民など原発の近隣住民からも、今回の件で初めて知ったという声が少なからずあがっているところだ。

そもそも、住民情報を登録したうえで使うといったアプリの用途を見るに、理想としては原発周辺の住人にはすべからくダウンロードして欲しい、というのが県側の思惑のようだが、それはそれで相当に高い壁であるのは明白。

現に、テレビなどで散々CMを流すなどの大々的なPRを行い、さらに最大2万円分のポイントという“ニンジン”までぶら下げているマイナンバーカードでさえ、その交付枚数率は鹿児島県全体で64.4%、薩摩川内市だと今年1月末時点で62.2%に留まっている状況だ。

にもかかわらず広報紙などでの呼びかけ程度で周知が徹底し、ダウンロード数が伸びると思っていたならば、それはかなり甘すぎる見通しだと言えそうで、そうでなければ「開発先に予算を配って作ったらそれで終わり」などと、もしや考えていたのでは……といった疑念も浮上してくるところである。

根強い“官製アプリ”への疑心暗鬼も影響か

いっぽう、ダウンロード数が伸び悩んでいる原因としては、原発事故への危機感が薄れつつある、地方に多い高齢層はそもそもスマホを持っていないなど、様々な理由が考えられるところなのだが、周知不足と同様に多いのが、政府や行政が手掛けるアプリに対しての不信感が、ダウンロード数の伸び悩みに繋がっているのではといった見方。

その最たる例といえるのが、コロナ禍の真っただ中に登場した新型コロナウイルス接触確認アプリ、略称“COCOA”だろう。濃厚接触者との接触を検知するなどの機能を持ち、広く国民にダウンロードを呼びかけられたアプリだったのだが、その最も重要な機能である接触通知が、一部の端末において約4か月に渡って届いていないなど、断続的に不具合が判明することに。

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さらには、開発を政府から受注した元請け企業が、その事業費の94%を複数の会社に再委託していたという、いわゆる「多重下請け」「中抜き疑惑」も大きな問題に。先述の不具合放置も、それが原因では……とも取沙汰される事態となった。

その開発や運用にトータル約13億円という予算を投じたとされるCOCOAだったが、結局は22年9月にコロナ感染者の“全数把握”を見直すことを契機に、機能が停止されることが決定。コロナの収束を待たずして“サ終”となってしまったのだ。

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このCOCOA以外にも、一時は“73億円”とされた巨額な開発費や当時のデジタル大臣への豪華接待も問題となった“オリパラアプリ”など、いわゆる“官製アプリ”にまつわる疑惑が噴出してるここ数年。それだけに、今回の原子力防災アプリに対しても「疑心暗鬼」などと、ネガティブな印象が付いて回る状況になっているようなのだ。

鹿児島県では、今週11日に鹿児島県や薩摩川内市などが主催の原子力防災訓練が行われる予定で、コロナ禍で見合わせとなっていた住民参加も3年ぶりに実現するとのこと。県側にとってはアプリをPRする絶好のチャンスといったところだが、上記のような“官製アプリ”に対する根深い疑念を晴らしたうえで、わざわざダウンロードしてもらうというのは相当に至難の業だと言えそうである。

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