fbpx

私大の初期費用、過去最高の平均225万円に。政府肝煎りの修学支援新制度の対象拡大も“絵に描いた餅”で貧困で学びを奪われる若者が続出か

首都圏の私立大へ2022年度に入学した下宿生を対象に、入学にあたっての初期費用を調査したところ、平均225万5,380円と過去最高を更新したと報じられている。

調査は栃木・埼玉・千葉・東京の4都県にある11の大学・短大の新入生の保護者を対象に、昨年5~7月に行われ、約4,200人分の回答を得たとのこと。

それによれば下宿生の場合、交通費・宿泊費を含む受験費用は前年度より1万1,300円増の26万5,300円、家賃は600円増の6万7,300円、敷金礼金は1万1,400円増の24万6,700円となったという。生活用品費などは減ったようだが、トータルで前年度より2万1,600円の負担増という結果となったようだ。

「貧乏は大学に行けなくなる」と嘆く声続出

子どもを地方から首都圏の大学に進学させるとなると、入学料・授業料などといった学費の高さもさることながら、それらにくわえ下宿先の敷金返金や家賃などの負担もバカにならないところ。

新築・中古を問わずマンションの価格が高騰している首都圏だが、無論賃貸の物件に関しても高止まりが続くといった状況。また、一時期増加していた“敷金礼金ゼロ”の物件が、ここに来て減少に転じているといった傾向も近年ではあるようで、そのことも今回の調査結果には如実に表れているようである。

【関連】なぜ借り主が負担?「家賃保証会社」利用が8割まで拡大も非難轟々。サラ金まがいの悪質取り立て&追い出しでトラブル続出

【関連】なぜか相次ぐ「風呂なし物件人気」報道に広がる違和感。クルマ離れや恋愛離れと同様、若者の貧困を「流行」で片付ける末期的な日本社会

厚生労働省による「国民生活基礎調査(2019年)」のデータによれば、日本全体の世帯年収の平均は552万3,000円、中央値は437万円ということ。だが、当然この世帯年収は地域によってかなりの差があり、最も高い東京都が629万7,000円なのに対して、逆に最も低い沖縄県は423万3,000円と、その差は実に200万円ほどまで開く。

このように年収が低く抑えられがちな地方の世帯ほど、子どもの大学進学に関してはより負担が重くなるケースが多いというのは、以前からも指摘が多かったいわば当たり前の事実。

とはいえ、どの家庭も収入がなかなか上がらない反面で、学費などの費用は年々上がり続け、今や世帯年収の半分ほどを大学進学の初期費用で支出せざる得なくなっているとあって、SNS上からは「うちの貧困家庭じゃ絶対出してもらえない額」「貧乏は大学に行けなくなる」「今や、子どもは贅沢品」といった、嘆きの声が相次いでいる状況だ。

https://twitter.com/HSPmetamon/status/1643813764503044096

2024年度から修学支援新制度の対象拡大も…

このように、進学における経済的負担が年々増しているといった状況に対し、政府側としても放置はできないということで、修学支援新制度の対象について2024年度からさらに拡大すると、今月4日に【関連】表明したばかり。

2020年4月から始まった修学支援新制度は、年収380万円未満の世帯を対象に、授業料を減免したり給付型奨学金を出したりするものだが、2024年度からはその世帯年収の縛りを年収600万円まで拡大するとのこと。ただし、そこには“扶養する子どもが3人以上いる多子世帯”“私立の理工農系の学生の世帯”という条件も加わるという。

【関連】【関連】参院選目当て?「給付型奨学金」受給の年収条件緩和を検討も“理系&多子世帯のみ”の制限付きで「やってるふり」「分断を招く」との批判殺到

実のところ今からちょうど1年前には、政府の教育未来創造会議がまとめた提言という形で、これとほぼ同様の内容が報じられていたのだが、パッと見では世帯年収の縛りがかなり緩められた画期的な制度と思いきや、この“子どもが3人以上の世帯”“理工農学部系の学生”という条件の存在によって、その対象はグッと狭まり、恩恵を受けられる世帯はわずかという、まさに“絵に描いた餅”だという見方が大勢だったのも記憶に新しい。

それだけに、当時も「選挙目当て」などといった批判が渦巻いていたこの提言だが、一年経った今回発表された今回の話も、そこからほとんど内容が変わっていないというのが実際のよう。

【関連】出産したら奨学金の返済減免…自民党“異次元にキモい”少子化対策に異論噴出。“官製学生ローン”利用者に子づくりを促す内容に「卑劣なマッチポンプ」との声も

かといって、従来からある貸与型の奨学金制度は、莫大な借金を抱える新社会人を増産するものとして問題視されているうえに、政府はそれを放置するどころか、出産奨励のための“エサ”にしようとする、グロテスクすぎるプランまでも浮上中。経済的な理由によって学びの機会が奪われるケースが激増しそうな今の状況に、あくまで政府は“やってるふり”で対策に本腰を入れないといった姿勢のようで、その無為無策ぶりに子を持つ保護者の不信や怒りは募るばかりといったところのようだ。

Next: 「もう何か狂ってきてますね」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー