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ワークマン、社外取締役にYouTuber起用で広がる波紋。「現場の味方でなくなった」との批判もあがるなか急浮上する“吉幾三待望論”

作業服大手の「ワークマン」が、社外取締役に女性YouTuberを起用するという報道が、大きな反響を呼んでいるようだ。

6月29日に開催される株主総会の承認を得たうえで、同社の社外取締役に就任すると発表されたのは、YouTuberでブロガーの「サリーさん」こと濱屋理沙さん。アパレルのネット販売事業に携わる傍らで、趣味であるアウトドアをテーマとした情報発信をブログやYouTubeで展開。自身のYouTubeチャンネルでは、ワークマンに関する動画を311本投稿し、その総再生回数は1356万回を記録しており、4万人超の登録者数を誇るという。

ワークマンは同社初の女性取締役となるサリーさんに対し、「女性アパレルに対する知見を活かす」「カリスマキャンパーとしての知見を活かす」「有力インフルエンサーとしての知見を活かす」ことを期待しているということである。

相次ぐ女性有名人の社外取締役起用

SNS上からは「特定のメーカーに特化して商品紹介すると開ける道もあるのですね…!」といった声があがっているほか、キャスターの辛坊治郎さんも自身がパーソナリティを務めるラジオ番組で「そういう道もあるのか」とコメントしている今回の件。

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YouTubeなどでの動画配信といえば、ひと頃と比べて最近ではめっきり稼げなくなったとの声も多く聞こえてくるなか、YouTuberとしての新たなる“あがり”のパターンとしても、大いに注目を集める格好となっているようだ。

また最近では有名人、とりわけ女性が社外取締役に就任するニュースも、よく見聞きするところ。つい先日にはフリーアナウンサーの中野美奈子さんが、四国電力グループの設備工事会社「四電工」の社外取締役に内定したと報じられたほか、女優だといとうまい子さんが進学塾「TOMAS」などを経営する「リソー教育」、また酒井美紀さんは「不二家」の、それぞれ社外取締役を務めているなど、枚挙に暇がない。

欧州連合(EU)においては、加盟27カ国の全上場企業を対象に、2026年半ばまでに社外取締役の40%以上、もしくは全取締役の33%以上を女性にすることを義務付ける法案が存在。また日本においても、東証と金融庁によるコーポレートガバナンス・コード(CGC)の改訂で、女性社外取締役の増加を促す項目が盛り込まれるなど、女性社外取締役へのニーズが高まっていることが、これらの現象の背景にあるとされているのだが、そのうえでその女性が著名人なら、PR効果も大きいということで、企業もこぞってそういう人物を起用しているといった状況のようだ。

とはいえ、そういった女性有名人の社外取締役への就任話に関しては、誰がとは言わないが「なんでこの人が?」といった声も、少なからず付きまとうところ。

ただ、今回のサリーさんに関しては、先述したYouTube上でのワークマン商品の紹介を機に、ワークマンのアンバサダーを務めるようになり、自身の名前を付けた商品の開発にも参画。それまでの地味な作業着が多いといった同社商品のイメージを大きく変え、昨今大流行の「#ワークマン女子」誕生のきっかけを作ったことでも知られる存在なかけに、今回の社外取締役への起用は理にかなったものだという見方が多いようである。

「吉幾三こそ社外取締役にすべし」募る職人の不満

先日発表された2023年3月期の本決算は、チェーン全店売上高は1,698億5,600万円(前年同期比8.5%増)だったものの、営業利益は241億600万円(10.1%減)、純利益は166億5,600万円(9.0%減)で増収減益となったワークマン。

いっぽう3月31日時点の店舗数だが、47都道府県下に合計981店舗まで増えてきており、今後も地方都市での出店を強化するなどして、いよいよ1,000店舗超えを目指すといったところのようだ。

このようにその勢いに若干の翳りはみえるものの、依然として成長曲線を描いているとされるワークマンなのだが、店舗数を増やすのと並行し、既存の「ワークマン」店舗をアウトドア商品を扱う割合が多い「ワークマンプラス」に転換する動きも進行。すでに全981店舗のうち、473店舗(3月31日時点)が「ワークマンプラス」に変わっているようである。

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そういった変化に伴って、主に以前からの利用者からあがっているのが「ワークマンは“現場の味方”でなくなった」といった。ワークマンがいわゆるカジュアル化を深める流れのなかで、商品の機能性がダウンしてしまったといった声、また各店舗の品揃えもサイズによっては在庫切れも多いなど、その満足度が低下しているとの声も噴出しているという。

過去の“現場の味方”だったワークマンを知る人々からは、同社がカジュアル路線へと舵を切り始める直前頃まで、長らく同社のコマーシャルに出演し、自らCMソングまで作っていた吉幾三さんを懐かしむといった声も、ここに来て目に見えて増えているといった状況で、なかには「吉幾三こそ社外取締役にすべし」といった声まであがっているようなのだ。

もっとも、ワークマンが最近作業服を軽視しているのでは……といった巷の噂に対し、同社は「むしろどんどん力を入れている最中」だと、その声を真っ向から否定している。とはいえ、このように根強い職人さんらからの不満を解消し、今までもこれからも“現場の味方”であり続けることを表明するといった意味でも、吉幾三さんの社外取締役起用というのは、何気に妙手となる可能性も秘めているといったところだろうか。

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